前頭前野の機能は30歳を過ぎると下り坂になるが…

先にもお伝えしたとおり、ネット検索で「クリック→報酬」を繰り返し、本来の脳の機能を使わない状態が続くと、ネットに依存してしまいます。そして認知機能を支える前頭前野を使わないことが習慣化。将来的に認知症のリスクが高まることは十分に考えられます。

そもそも前頭前野の機能は30歳を過ぎると、どんどん下り坂になっていきます。注意力が落ちるとか、集中力がもたないといったことには、老化の影響もありますが、スマホはそれをさらに加速させてしまう可能性がある。ですから、スマホの使い方をコントロールし、脳の働きをいかに維持していくか。30歳を過ぎたらこれが大切になります。

前回の記事で子どもには、スマホの使用は1日1時間未満を推奨しましたが、仕事の連絡などが多い大人がその時間を守るのは、非常に難しいところ。ですから余暇の時間は、せめてスマホを見るのではなく、本や新聞を読みましょう。

1日10分でも毎日コツコツと読書を続けることは、脳の機能を維持するのに役立ちます。内容は自分の興味のあることや目についたもの、何でもOKです。なかでも毎日、一定量の幅広い情報が届く新聞は、気になる部分だけを拾い読みしやすく、毎日の読書習慣をつけるにはもってこいです。

電子書籍は記憶に残りにくく、内容が理解しにくいという調査結果も出ているので、紙のほうがおすすめですが、出張や移動で何冊も持ち歩けないときには便利です。その場合は、専用の端末を使いましょう。スマホだと通知がくるたび、それが気になり内容に集中できなくなるからです。

ちなみに脳への負荷は、小説>漫画>動画。脳で想像することを、漫画は表情や台詞、情景などの絵が肩代わりしています。動画はさらに声や動きが加わり、もっと脳を使わずにすむ。ですから脳を鍛えるなら、いちばんは小説です。ただし漫画は読書へのモチベーションにつながりますので、たとえば歴史を漫画で学ぶことは、導入としてよいことだと思います。

図書館で本を読む女性
写真=iStock.com/JGalione
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オンラインでの会話より直接会って話す方が頭を使う

コロナ禍でリモートワークが主流になり、今は会議も打ち合わせも、対面かオンラインとのハイブリッドが増えています。どちらか選べるなら、負担の軽さから、おそらく大半の人がオンラインを選ぶのではないでしょうか。目的が情報をやり取りするだけということならオンラインでも構いませんが、なるべく対面で参加してほしいですね。

なぜなら、対面で互いに目を見ながら話すと、相手と自分の脳が同期されて感情が共有されるからです。パソコンのモニター越しだとそれがなく、単なる情報の交換にしかなりません。オンラインの会話は、一人でボーッとしながら何も考えていないときと同じ状態であることも、私たちの実験結果からわかっています。