監護親だけが親ではない
子どもを監護養育している親が、子どもと同居していない親の悪口を言ったり、知らず知らずのうちに表情や身振りで、否定的評価や悪感情を持っていること、侮蔑や嫌悪していること、さらには子どもに別れて生活している親とは会ってほしくないと思っていることなどの考えやメッセージを伝達したりしてしまわない配慮が必要と言えるでしょう。
とりわけ子どもと同居していたり、近くに住んでいて子どもの世話の一端を担ったり、子育ての手伝いをしている祖父母が、これらの点を守ることが重要です。
こうした配慮をすることによって、監護親やその周囲の大人たちの、子どもと別れて住んでいる親に対する悪感情が子どもに刷り込まれて、子どもが別居している親についての悪いイメージを形成して忌避するようになるのを防止することができます。さらに、子どもが、意図的、非意図的あるいは意識しないままに、同居している親への忠誠を示そうとしたり、同居親の意を汲んだり、同居親の意向を先取りした意思の表明や過同調的な行動をすることも防ぐことができます。子どもは別居親に対する正直な感情や考えの表明と、それにもとづいた素直な行為をすることができるようになると考えられます。
離婚した夫婦の協働によって、子どもの幸福実現のために親権者を変更することも可能なのですから、上述のような配慮を行って子どもの利益のために協力し合うことによって、面会交流などもスムーズに実現することになると思われます。
1952年愛知県生まれ。東京大学卒業。大阪大学大学院修士課程修了。専門は犯罪学、刑事政策、社会問題研究。南イリノイ大学フルブライト研究員、スウェーデン国立犯罪防止委員会、ケンブリッジ大学等の客員研究員、中国人民大学等への派遣教授、法務省法務総合研究所研究評価検討委員会委員等を務めた。博士(人間科学)。保護司。著書に『新版 少年犯罪 18歳、19歳をどう扱うべきか』(平凡社新書)、『幸福な離婚 家庭裁判所の調停現場から』(中公新書ラクレ)、『腐敗する「法の番人」 警察、検察、法務省、裁判所の正義を問う』(平凡社新書)などがある。