こうした背景の下で、公立小中学校の完全無償化を2022年度に行った自治体は、日本農業新聞の調査によれば、28%と、およそ3割にも上った(「『給食無償化』自治体3割で実施 物価高受け生活支援 継続へ財源課題」2023年2月22日)。子どもの数が少ない小規模の自治体だけではなく、東京都の23区内でも、中央区、台東区、品川区、世田谷区、北区、荒川区、葛飾区では小中学校完全無償化、足立区では中学校のみ、練馬区で第2子以降のみ無償化を2023年度開始当初から行っている。ここに加え、6月より大田区、8月より新宿区で第2子以降、今秋9月より板橋区、江戸川区、文京区、港区、足立区(小学校も完全無償)、墨田区、豊島区、そして10月より江東区と、制度の詳細は多少異なりながらも、特別区主導の無償化は急拡大している。

ただし、留意すべきは、3割の自治体では給食費無償だが残りの7割は有償であること(日本農業新聞の2022年2月の調査時点)、そして、期間限定の取り組みであって必ずしも恒久的な取り組みではないものも中にはあるということ、また一方で、中学だけ無償、第2子または第3子以降だけ無償、2分の1補助などの、「一部無償」の自治体もあるということだ。住んでいる自治体により、保護者の家計負担軽減措置が異なり、また、憲法上、そして国際法上保障を受けるべき子どもたちの〈食の権利〉保障の状況に格差がある、ということである。

国の責任で全国の給食費無償化を

経済財政運営と改革の基本方針2023」いわゆる「骨太の方針2023」ではついに、「学校給食無償化の課題整理等を行う」という言葉が登場した(19ページ)。課題整理・問題把握にとどめることなく、しっかりと国の責任において全国一斉の給食費無償を進めてもらうため、筆者は全国オンライン署名「#給食費無償」を全国へ!を実施している。この署名では、「普遍的現物給付」としての一斉の給食費無償を通じて、あらゆる子どもたちの〈食の権利〉を保障するとともに、給食に携わる人々の負担軽減を訴えており、どの人にとっても、給食が安心・安全で心安らげる時間となってほしいと考えている。

この署名の存在を知り、賛同いただける方は、https://www.change.org/Free-Kyushokuにアクセスするか、署名の名称を検索することでオンライン署名に参加していただきたい。名前とアドレスだけ登録していただけたら、署名時に「アカウント名を表示させる」のチェックを外すだけで匿名で署名に賛同することができる。

福嶋 尚子(ふくしま・しょうこ)
千葉工業大学准教授、教育行政学者、「隠れ教育費」研究室 チーフアナリスト

新潟大学大学院教育学研究科修士課程を経て、2011年、東京大学大学院教育学研究科博士課程に進学。2015年より千葉工業大学の教職課程に助教として勤務し、教育行政学を担当(現在は准教授)。2016年12月博士号(教育学)取得。「子どもを排除しない学校」「学校の自治」「公教育の無償性」の実現、「教職員の専門職性」の確立を目指し、教材教具整備・財務に関わる学校基準政策、学校評価・開かれた学校づくり・チーム学校等の学校経営改革について、現代的視点と歴史的視点の両面から研究している。著書に『占領期日本における学校評価政策に関する研究』、共著に『公教育の無償性を実現する 教育財政法の再構築』、『隠れ教育費 公立小中学校でかかるお金を徹底検証』など。