就学援助「届くべきところに届いていない」

経済的に厳しい家庭の学校給食費の家計負担を補助する仕組みとして、就学援助などの制度がある。認定されれば学校給食費全額が補助される場合が多いため、非常にありがたい仕組みだ。

しかし、認定基準や認定手続きが自治体により異なるうえ、急な家計状況の変化に必ずしも対応しきれていない。また、学校や給食センター、給食会への振り込み手続きの仕組みがあればよいが、家庭にいったん振り込まれると、給食費として支払われずに、他の使途に流用されてしまうという問題が発生する。しかも、学校給食自体が実施されていない学校に通っていれば、就学援助制度に認定された家庭であっても、昼食分の補助はなく、弁当の食材料費はそのまま家計負担となっている。

つまり、届くべきところに届かないこと、また、家計の足しにはなっても、必ずしも子どもの〈食の権利〉保障につながらない可能性があること、これが限界としてある。

教員負担が大きい「給食費の徴収」

苦しい家計の状況から、学校給食に目を移すと、実はそこにも問題が山積している。有償である限り、うっかり残高不足になってしまうような事例も含め、未納問題は決してなくならない。子どもたちの中には「わが家はどうやら給食費が未納らしい」「シュウガクエンジョで助けてもらっている」ということを気にする子もいる。

また、有償である限り、学校事務職員や学級担任、行政職員などの徴収事務を担う人が、保護者の給食費未納に対し、気の重たい督促事務をも負い続けることになる。特に徴収金事務は教員の働き方改革の中で「移行」が望まれる職務の一つになるほどだ(※1)。私会計の場合、年度内の未納分数十万円を校長がポケットマネーで補塡ほてんするというような実態もあると聞く。

学校現場での給食をめぐる負担は特に重大だ。学級担任は配膳指導と給食指導を行いながら、休憩なしでかき込むように給食を食べることとなり、残飯の量まで気にしなくてはならない。各クラスに何種類ものアレルギー除去食があり、それが誤って子どもの口に入らないよう目を配らなければ、子どもを命の危険にさらすことにもなる。それにもかかわらず多くの場合、給食費を自己負担している。

学校栄養職員・栄養教諭は、3校に1校しか配置されておらず、明らかに人手不足・業務過多の状態だ。そんな中で、収入の安定しない保護者負担の給食費で物価高に対応しながら、栄養基準を満たしバランスのとれた毎日の献立を考える難題に取り組んでいる。年度末にどうしても栄養基準が満たせなくなってしまう、というような声も聞こえてくる。

調理員に目を転じると、子どもたちの健康を担保する重要な職でありながら、時に高温加湿の調理室で火を扱い重いものを運ぶという過酷な労働を負っている。いわば現場のマンパワーに助けられて、ようやく今の意義深い学校給食は維持されているともいえる。

※1 中央教育審議会答申「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」(平成31年1月25日)62ページで、その旨提言されている。

給食費
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