モラハラ家庭は家事の分担で揉めない
離婚相談において、家事の分担で揉めたという話はよく出てきます。共働きだから夫にももう少しやってほしい、夫がうまく家事ができなくて手間が増える……。そういったよくある話が、モラハラ家庭には出てきません。
そもそも家事は妻が全部やるものという暗黙の前提があり、「分担」の意識がないため、家事を全く助けてくれないどころか、夫に家事をチェックされてつらい、という話しか出てこないのです。
夫は帰宅すると家中をチェックして、ゴミやほこりが残っていたらやり直しを命じます。不思議なことに、ゴミを見かけても自分で拾わず、「ゴミが落ちているぞ!」とわざわざ妻に拾わせるのです。
家事にうるさい夫ほど自分の机やタンスは汚いという傾向もあり、決してきれい好きだから妻に注意しているというわけではないのです。
総菜にまつわるエピソードも頻出します。仕事や家事で疲れたから総菜を買って夕食に出すと、激怒されるというのです。デパートの総菜ではなく、スーパーのコロッケであっても、です。
「怠けやがって、誰の金だと思ってるのか」が、モラハラ夫の決まり文句です。一方で、妻の料理がおいしくないと怒ったという話は出てきません。
こういったエピソードから見えてくるのは、モラハラ夫は味や値段、効率といった結果ではなく、「妻が時間と手間をかけて家事をすること」そのものに強くこだわっているということです。
そんな彼らからすると、便利家電を欲しがる妻は、お金をかけて怠けたがっているように見えます。だから彼らは食洗機と聞くと火がついたように怒り始めるのです。妻が調べて、食洗機は手洗いに比べて節水になる、電気代もわずかであると教えても、夫は認めません。彼らはお金がもったいないのではなく、妻が家事をさぼることが許せないのです。
中には、反対はされたもののどうしても欲しいので独身時代の貯金から買ったという妻もいました。これなら文句は言われないと思いきや、今度は食洗機を動かしている最中に、「食器洗いをさぼっているんだから浮いた時間で他の家事をしろ!」と怒られるようになったそうです。
食洗機は敵、ロボット掃除機も敵
「現代版三種の神器」と呼ばれることが多い便利家電は、食洗機、ロボット掃除機、ドラム式洗濯乾燥機です。食洗機以外の2つもモラハラ夫に購入を反対されたエピソードを耳にします。家事の手間を省く価値がわからないモラハラ夫には、食洗機と同様に無駄づかいや手抜きの象徴に見えるのかもしれません。
もちろん、食洗機の購入を反対したから即モラハラ夫というわけではありません。妻の希望を聞いて、「欲しいのはわかるけど……」と理解を示して、一緒に検討した末に購入しないのであれば、それは夫婦で話し合いができていると言えます。
そうではなく、食洗機を買いたがるのをまるで悪いことのように怒ってきたら……。その根底には、妻は家事をするべきものだという気持ちがありそうです。
もしあなたが夫はモラハラではないかと思っていたら。一度「食洗機が欲しい」と言ってみるのが効果的かもしれません。
北海道札幌市出身、中央大学法学部卒。堀井亜生法律事務所代表。第一東京弁護士会所属。離婚問題に特に詳しく、取り扱った離婚事例は2000件超。豊富な経験と事例分析をもとに多くの案件を解決へ導いており、男女問わず全国からの依頼を受けている。また、相続問題、医療問題にも詳しい。「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)をはじめ、テレビやラジオへの出演も多数。執筆活動も精力的に行っており、著書に『ブラック彼氏』(毎日新聞出版)、『モラハラ夫と食洗機 弁護士が教える15の離婚事例と戦い方』(小学館)など。