漫画でも「何も読まないよりはまし」

ところで、読書に関して「漫画でもよいのでしょうか?」という質問をよく受けます。「何も読まないよりはまし」と、私としては答えています。

漫画を読んでいるときの脳活動も測定したことがありますが、前頭前野は活字の本を読むときほどには活性化していませんでした。それでも、文字が大好きな脳にとっては、漫画の吹き出しの中の文字を読むことで、通常より活性化する反応が見られました。

とりわけ、物語性のある漫画を夢中になって読むのは、脳にとって悪いことではありません。「いろいろな言葉の意味を漫画で覚えた」というのもよくあるケースです。

「勉強の妨げになる」と、子どもから漫画を取り上げる必要はありません。「文字を読むトレーニングの一環」と考えてかまわないでしょう。

幼少期は「読み聞かせ」で心が育つ

幼少期のお子さんの場合は、家庭での「読み聞かせ」がお子さんにとっての読書習慣となります。

川島隆太『子どもの脳によいこと大全』(プレジデント社)
川島隆太『子どもの脳によいこと大全』(プレジデント社)

学童期の読書習慣は、前頭前野を活性化して思考力や言語能力の発達にポジティブな影響を与えるものでした。対して、幼児期の読み聞かせは、感情に関わる「心の脳」の発達に大きな影響を与えるということがわかっています。

子どもが物語を聞いているとき、脳にどんな活動が起こるのか。まず、「耳から音を聞く」作業を行うために側頭葉の活動が活発化します。次に、感情や記憶に関わる「大脳辺縁系」が活性化します。

大脳辺縁系は、感情が働くときに活動するため、「心の脳」と呼ばれています。