ジャニーズでなければ視聴率が稼げないわけではない
出演番組数の多さから、「もはや地上波はジャニーズなしには回らない」という見方もできるが、必ずしもそうとも言えない。なぜなら、ジャニーズタレントの出演で視聴率を稼げている番組は数えるほどしかないからだ。
【図表1】で赤線で囲ったのは、彼らの主演ドラマや冠番組、メインMCの番組で、つまり「ジャニーズタレントなしには成立しない」と言ってもいい番組だ。しかし、これらの番組全てが視聴率で上位に入っているわけではない。これは他の事務所にも言えることだが、ひと昔前に木村拓哉などについて言われた「数字を持っている」タレントなど、今は存在しないのである。
ドラマは「教場0」「王様に捧ぐ薬指」「特捜9」「どうする家康」が視聴率トップ10にランクインし、音楽番組では「ミュージックステーション」が上位になっているが、その他の番組に視聴率を稼ぐというメリットがあるとは思えない。
それなのになぜジャニーズタレントはテレビを席巻しているのか。ひとつにはスポンサーとの関係がある。例えば「それSnow Manにやらせて下さい」のCMを見れば、Snow Manが出演している企業ばかりであることがわかる。F1層(20~34歳の女性)にリーチしたいスポンサーとその層にファンが多いアイドルグループ(SnowManのファンクラブ会員は約115万人)のウィンウィンな関係がある。だから世帯視聴率は問題ではないのだ。
タレントにとってテレビは信頼性を担保する「営業」の場
そもそも、ジャニーズのように巨大な芸能事務所から見れば、タレントがテレビ番組に出て稼ぐ出演料の比率は小さい。重要なのはCM出演料である。
もうひとつの収益の柱は、いまだにジャニーズだけは売れると言われるCDセールスやコンサートでの売り上げだ。これはいかに多くのファンを獲得するかにかかっている。
ジャニーズタレントにとってテレビは、いわば「営業の場」なのである。彼らは国の認可事業である地上波テレビ、「みなさまのNHK」「TBSの日曜劇場」「フジテレビの月9」に出ているから、スポンサー企業に信頼される。「ミュージックステーション」など、音楽番組での露出が多いことでファンが増え、CDを買ってもらえてコンサートにも来てもらえる。
つまり、テレビ局は「アイドルに罪なし」と方針を変えないことで、ジャニーズ事務所が引き続き巨額の利益を得ることに加担しているのだ。たび重なる性加害を許した異常な構図が、はたしてこのままでよいのだろうか。
1995年、出版社に入社し、アイドル誌の編集部などで働く。フリーランスになってからも別名で芸能人のインタビューを多数手がけ、アイドル・俳優の写真集なども担当している。「リアルサウンド映画部」などに寄稿。