日本テレビのニュースで櫻井翔が「自分の意見」

また4月には、日本テレビの夏のチャリティ企画である「24時間テレビ46」のメインパーソナリティーを「なにわ男子」とすることが発表された。このポジションは長年ジャニーズタレントが起用されている。

「news zero」では月曜のキャスターを嵐の櫻井翔が務めているが、5月29日までの放送で櫻井は性加害問題についてコメントしていなかった。明らかに不自然な対応だったが、日本テレビの石澤顕社長は「現場の判断を支持したい」と述べるにとどめていた。

しかし、6月5日の「news zero」で櫻井は生放送でカメラに向かい、性加害問題について初めて以下のように話した。

「今回の件ですが、私は2つの側面があると考えています。ひとつはこの問題の責任が問われている事務所に所属しているということ。もうひとつは大きな意味では、自分は“被害者側”に見られうる立場に置かれているということです。私にとってこの2つの側面を踏まえますと、コメントすることは難しいと考えていました。今もまだどの立場でどうお話できるのか、難しいのですが……。
お伝えしたいことのひとつは、憶測で傷つく人がいるということです。かつて同じジャニーズJr.として時間を共にしてきた大切な仲間の中には、既にこの世界とはまったく違うところで新しい人生を歩んでいる人たちもたくさんいます。そういう人たちも含めて、あらぬ憶測を呼び、今回の問題の対象となってしまうことは、何よりも避けなければいけない。避けたいと。そこを考える中で私自身発言すること自体が、また憶測を呼び、広げ、無関係な人まで傷つけることにつながるのではないかということを恐れています。
ただ、だからこそ、ジャニーズ事務所は話したくない人の口を無理やり開かせることなく、しっかりとプライバシーを保護した上で、どのようなことが起こっていたのかを調査してほしい。そして、被害を訴える方々ならびに、本日提出された署名をした皆さん(編集部註:岡本カウアンらが国会で児童虐待防止法の改正を求める約4万人分の署名を提出)の思いを重く受けとめ、二度とこのような不祥事が起こらない体制を整えなければならないと思います。
最後にあらゆる性加害は絶対に許してはならないし、絶対に起こしてはならないと考えています」
(6月5日放送・日本テレビ「news zero」)

所属タレントにコメントさせ、社長は隠れたまま

櫻井は、言葉を選びながら、慎重な面持ちで語っていたが、「何よりも避けなければいけない」と気遣うべき対象は、現に「性被害を受けた」と訴えている人たちではなく、「性被害を受けたのでは」という「臆測で傷つく人たち」だったことは残念に思う。

「自分は被害者側に見られうる立場に置かれている」という発言もあり、現在活躍しているジャニーズ事務所のタレントの立場を守ることが念頭にあったのかもしれない。

所属タレントが自社の問題についてニュース番組でコメントを求められるという構図はきわめて異例だ。櫻井のコメントばかりを責めるわけにはいかないだろう。こうした構図になったのは、藤島ジュリー景子社長が「謝罪動画」を公開するだけで、一切の取材に応じていないからだ。タレントを矢面に立たせるばかりで、性加害の当事者の親族である現経営者が隠れたままでは、視聴者の理解は得られないだろう。

これまで櫻井がコメントを見送ってきたのは、ジャニーズ事務所の最年長タレントである東山紀之の影響があったとの指摘もある。東山は自身がMCを務める「サンデーLIVE‼」(5月21日放送、テレビ朝日系)で、「このままジャニーズという名前を存続させるべきなのか」と踏み込んだ発言をする一方、「僕からコメントするまでは後輩たちには待ってもらった」と発言していた。テレビ朝日の会見では、東山がコメントすることは局側からの要請であったことも明かされた。

テレビ朝日のスタジオの向かいに「合宿所」があった

テレビ朝日とジャニーズ事務所の関係も長く深い。4月クールではドラマ枠で井ノ原快彦主演の「特捜9 season6」と横山裕主演の「帰ってきたぞよ!コタローは1人暮らし」を放送し、6月7日からは「特捜9」の後に東山紀之主演の「刑事7人」が始まる。「ミュージックステーション」には毎回いずれかのグループが出演し、司会のタモリと共にひな壇に座って軽快にトークしている。

テレビ朝日本社前
テレビ朝日本社前(筆者撮影)

「ミュージックステーション」などを収録する本社は六本木ヒルズにあり、もうひとつの収録拠点は赤坂寄りのテレビ朝日アーク放送センターにある。

ここで気になるのは、複数の元ジャニーズJr.がここでジャニー喜多川から性的なことをされたと告白した「合宿所」が、一時期、アーク放送センターの向かいにある全日空ホテル(現ANAインターコンチネンタルホテル東京)にあったということだ。同じアークヒルズの敷地内で、あまりにも近すぎる。番組の収録を終えたタレントが、徒歩で向かいのホテルに入っていくという流れが目に浮かぶようだ。テレビ朝日は事務所の検証に任せるのではなく、この点を調査すべきだろう。