ジャニーズ事務所は稼ぎ続け、既得権益は温存される

たしかに前社長がタレントに性行為を強要していたということで、被害者側であるタレントの仕事が減るというのはおかしい。しかし、所属タレントがテレビ番組に出続ければ、問題があったはずのジャニーズ事務所も稼ぎ続けることになる。

ここで現在、注目されている各局とジャニーズ事務所の関係を見ていこう。

まずNHKは、大河ドラマ「どうする家康」で松本潤が主演を務めている。1年続く長丁場でまだまだ前半戦、松本のみならず、大河主演経験のある岡田准一がサブの信長役で出演しており、ジャニーズ事務所との間に摩擦を避けたいという思惑は一部にあっただろう。

【図表】ジャニーズ事務所所属タレント出演番組 6月1日(木)~6月4日(日)
筆者作成

「クローズアップ現代」が取り上げた

しかし、4月に元ジャニーズJr.の岡本カウアンが日本外国特派員協会で告発会見を行った際には、岡本と同世代だという女性ディレクターがYouTubeで生中継されていることを承知で、テレビがこの問題を報じてこなかった責任に踏み込む質問をした。そこからは「クローズアップ現代」などで独自取材も交え性加害問題を報じている。

NHKはジャニーズを辞めたタレントの起用にも積極的だ。2017年に事務所を退所したSMAPの草彅剛、稲垣吾郎、香取慎吾をいち早く大河ドラマや朝ドラに出演させ、Eテレで「SMAP×SMAP」(フジテレビ系)を彷彿とさせるコント番組「ワルイコあつまれ」も放送している。

また2022年には、2020年に退所した山下智久の主演ドラマ「正直不動産」を放送した。2019年退所の錦戸亮もテレビから姿を消していたが、この5月から「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(BSプレミアム)に出演している。

一方、民放各局は露骨な忖度そんたくがみえる。日本テレビでは連続ドラマ8本のうち、髙橋海人と森本慎太郎がダブル主演する「だが、情熱はある」など4本にジャニーズタレントが出演中。そもそも、日本テレビは東京キー局の中でも特例でジャニーズだけが主演するドラマ枠「シンドラ」を設定している(関連会社のジェイ・ストーム製作)。現在は「美少年」というグループの4人が主演する「春は短し恋せよ男子。」が放送中だ。