東京新聞や週刊文春などによると、故・ジャニー喜多川氏の性加害疑惑について4月21日、ジャニーズ事務所が社長の藤島ジュリー氏の名義で、スポンサーやテレビ局、音楽関連会社などの取引先企業に、事務所の対応を釈明する文書を送っていたという。コラムニストの河崎環さんは「釈明文書には、『社員や所属タレントを対象に聞き取り調査を行った』と書かれているという。それは一度埋めた『墓を掘り返す』行為だが、ジュリー氏は、どこまで掘り返す覚悟を決めているのだろうか」という――。
日本外国特派員協会で記者会見する元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏。=2023年4月12日
写真=EPA/時事通信フォト
日本外国特派員協会で記者会見する元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏。=2023年4月12日

アンケートで浮かび上がったスポンサー企業の姿勢

4月26日正午、週刊文春電子版が「電子版オリジナル記事」として公開した「〈回答全文公開〉ジャニーズ事務所スポンサー116社+テレビ局6社独自アンケート『説明文書の評価は?』『ジャニー氏の性加害への見解は?』」は、日本社会の体質が炙り出される、何よりもジャーナリスティックな鋭さのある記事だった。

そこには、戦後の日本社会に広く深く根を下ろした「芸能界」を代表する“ジャニーズ”というものを企業広告がどのように扱い、付き合ってきたのか、日本における広告スポンサーシップの現状と価値観がそのまま表れていたように思う。

まずは、高い経営透明性が問われる業界で、コンプライアンス遵守を優先事項に掲げるような企業。彼らは、自分たちの情報開示姿勢がクリアーで健全な経営方針であることを明言し、取引相手であるジャニーズ事務所にも同じ経営態度への理解や協力を求める。それは、スポンサーとしてタレント事務所や広告代理店よりも力学的に上位にいることの表明でもある。

一方で、「弊社はコメントする立場にございません」「他社様のことですので、コメントは差し控えさせていただきます」などのコメントを返す企業は、タレントを「使い」、広告発信で文化を創ることができる側のスポンサーでありながらも、芸能という自分たちとは畑違いの分野に対する事なかれの姿勢を感じさせる。それはそっちのギョーカイのお話ですよね、私たちは地道にものづくりして売って、広告にはお金を出しただけですので。タレントさんをキャスティングしてこられたのも広告代理店さんですし……。そんなボヤキも聞こえてくるようだ。

そして「守秘義務がありますのでコメントできません」を盾とする企業の存在も興味深い。では、同じ守秘義務を負っているはずだが「取引先であるジャニーズ事務所は弊社同様にコンプライアンスを遵守し、社会的責任を全うしてほしい」との意思表示をする他の企業とは、どこがどのように違うのだろう。それは企業活動を通した文化の担い手として、主体的に「もの言う企業であろうとするか否か」、のような気がする。

そして最も忘れてはならないのが、一覧の中にはいない、だけど日本の大スポンサーといえばすぐに思いつくような数社の存在である。彼らの多くは日本企業でありながら、大きな海外市場を持つグローバルグループだ。海外第一線の現場であちこちの異文化に揉まれてきた企業は、製品や企業イメージを発信するにあたって、日本のタレントの人気を利用するような広告を作らない。文化的多様性やジェンダーの繊細さも理解しているから、国内に向けてすらも固定イメージのあるジャニーズのようなタレントを起用していない、ということに気づかされるのである。