「子どもにそんなものを見せるな!」
いわゆる国際結婚をしている友人が、こうこぼした。
「たまたま出演者の中にジャニーズがいるテレビ番組を子どもと見ていたら、英語圏出身の夫が血相を変えて走ってきて、『そんなものを子どもに見せちゃダメだ!』って、テレビを切ったの。『ジャニーズ事務所のタレントが出ている番組を見ること自体が、(ジャニー喜多川氏によって行われていたと疑われる)性的搾取をOKだと肯定することになる。大人の我々もこんなものを見てはいけない』って。言ってることはすごくわかるけど、でも今の日本でどのチャンネルつけても、映画も新聞も雑誌もウェブも街なかの広告も、ジャニーズが出ていないものなんてないから、避けようがないのよ……」
少年への性加害疑惑に対する、海外と日本の価値観の温度差がはっきりと可視化されたエピソードだ。
ジャニーズを「推し」ていたり、積極的ではないにせよさまざまなメディアを飾るジャニーズタレントを「カッコいい」「かわいい」「歌うまい」「演技うまい」と愛で褒める我々日本の視聴者に、「自分たちは『卑劣な犯罪(容疑)者による少年たちへの長く恐るべき性的加害(疑惑)』を肯定・容認している」という意識は、ほぼない。おそらく、ジャニーズタレントを起用している制作側にも、自分たちの仕事が故・ジャニー喜多川氏の性加害(疑惑)を間接的に支持・支援してきたかもしれないという強い自覚はない。
BBCが報じたジャニー喜多川氏の性的加害疑惑
3月7日、英国の公共放送BBCがドキュメンタリー「Predator: The Secret Scandal of J-Pop」を英国内で放送。日本のタレント事務所であるジャニーズ事務所の創設者、故・ジャニー喜多川氏が生前にタレント志望の少年たちへ性的加害を繰り返していたと報じた。被害者たちが顔を出して証言する一方で、異口同音に「ジャニーさんを恨んでいない」と言った内容が、「グルーミング(性的加害を意図する大人が未成年を手なずける行為)」との比較的新しい語彙とともに、大きな話題となった。
17日には、番組制作を担当したBBC記者であるモビーン・アザー氏とディレクターのメグミ・インマン氏を招いたオンライン会見が日本外国特派員協会(FCCJ)で行われ、その翌18日には日本のBBC News Japanチャンネルでも同番組が字幕付きで放送された。
また、それに並行する形で『週刊文春』が何十年も前から続けてきたジャニー喜多川氏の性加害疑惑を再報するキャンペーンを行い、SNSでも拡散され、ジャニーズタレントの性被害(の可能性)に言及する唯一の大手メディアとして、たいへんな注目を浴びた。