「25も200の差も同じ目盛り」に隠されたトリック
さらに、ステータスバーの目盛りにもちょっとしたトリックがあり、25スターと50スターの目盛りの間隔が、200スターと400スターの目盛りの間隔と同じになっています。
25の差も200の差も同じ目盛りというのはグラフとしては明らかに間違いなのですが、行動経済学的に言えば優れた戦略。顧客はよく吟味せずにパッと見た雰囲気で判断するため、「もう50スター集めた。頑張って最後まで集めよう」と誘導されてしまうのです。
実際には、50スターまでよりも、その先の400スターまでのほうが、集めなければならないスターは当然、多くなります。こうしてスターバックスのこの「スター」制度は、多くの利用者を集めています。
多くの企業は人の非合理な意思決定と行動のメカニズムを知り、競争相手より優位に立とうとしているので、行動経済学を使っていることを企業秘密として公言しません。いわばお客さまには知られたくない“公然の秘密”というわけなのです。
しかし、行動経済学を学ぶと「このサービスは行動経済学が裏にあるな」とすぐにわかるようになる――それどころか、ひとたび行動経済学を学ぶと、世界が違って見えてきます。
あらゆる企業の戦略が張り巡らされた今、教養としての行動経済学を身につければ、二度とそれまでのような素朴なものの見方はできなくなるでしょう。
・企業側としては、顧客にサービスや商品をより多く楽しんでいただくための戦略家になれる。
これこそ、世界のビジネスパーソンが行動経済学を学ぶ理由なのです。
行動経済学コンサルタント。オレゴン大学卒業、同大大学院 心理学「行動経済学専門」修士課程および、同大ビジネススクール「行動経済学専門」博士課程修了。デューク大学ビジネススクールポスドクを経て、行動経済学コンサルティング会社であるサガラ・コンサルティング設立、代表に就任。その後、イプソスにヘッドハントされ、同社・行動経済学センター(現・行動科学センター)創設者 兼 代表に就任。現在は、ビヘイビアル・サイエンス・グループ(行動科学グループ、別名シントニック・コンサルティング)代表として、行動経済学を含めた、行動科学のコンサルティングを世界に展開。