世界的大手が活用する「現状維持バイアス」

アマゾンやディズニーなどの配信サービスも同じで、プログラムの第1話が終わると自動的に第2話が始まりますが、思い出してみればDVDの時代は自分で再生し、その都度「見続けるかどうか」を決定していました。その結果、今のようにだらだらと見続けてしまうことは少なかったのです。

しかし、今の配信サービスのように勝手に再生されたら、今の状態を続けたい「現状維持バイアス」という行動経済学の理論が働いて視聴を続け、やがて「1話が終わったら自動的に2話が始まってそのまま見るのが当たり前だよ」という状態になり、延々とアプリを使い続けます。TikTokはまさにこれです。

人間は合理的かつ冷静に意思決定すると伝統的な経済学は考えますが、実は非合理ですし、こういった企業は、そのことを理解し、上手くビジネスに取り入れているのです。

スターバックスがトップ企業でいられる理由

FAANG以外にも、食品から医薬品まで多くの大手メーカーは行動経済学をビジネスに取り入れていますし、トップ企業がトップでいられる理由の一つに、行動経済学に基づいた戦略がある例もよく見聞きします。

例えばスターバックスのモバイルアプリは、行動経済学を徹底的に活用して作られているようです。

特に注目したいのが「スター」というポイント制度。最終的には「ゴールドスター」のステータスとなり、新製品を一足先に購入できたり、誕生日プレゼントがもらえたりする特典がつきます。

何より「スターバックスの上級ステータス」というランクづけは、顧客に優越感をもたらします。これは行動経済学で言う「ポジティブ・アフェクト(ポジティブな淡い感情)」という理論を利用した戦略と言えます。

ステータス制度は航空会社、ホテルなど多くの企業が導入していますが、スターバックスのこの「スター」制度では、モバイルアプリで「残り4日!」と期間限定ボーナスがもらえる期間がメッセージで送られてきたり、「ゴールドスターまであと○○スター」とゴールまであとどれくらいかを示されたりします。

これらも行動経済学の観点から言えば、ゴールが近づくほど意欲が増す「目標勾配効果」という理論の応用です。期間限定ボーナスや徐々にステータスが上がっていく仕組みは、コンピュータゲームの理論をビジネスに応用した「ゲーミフィケーション」でもあります。