肉だけでなく、魚・海藻・緑黄色野菜が不足しがち

まだまだ〝現役〟として仕事をするであろう60代まではもちろん、以降の人生も健康で、好きなことをして、おいしいものを食べて生きていきたい。自立して社会活動を行う力を、死ぬまで維持したい。それを実現するための食生活を、日本応用老年学会理事長の医学博士・柴田博教授に伺った。

「老化というのは、あたかも金属がさびてボロボロになるように、体の中の細胞が破壊されていく状態のことです。特に強い酸化力を示すのが、私たちの体内で発生する活性酸素。この働きを弱める抗酸化物質を多く含むのが野菜や果物です。それを食べると同時に、細胞膜の“材料”となるコレステロールを含む肉をバランスよく摂っていれば安心ですよ」

私たち日本人は魚ばかりでなく、新鮮な野菜や果物、おいしい肉類に恵まれた環境の中で暮らしていることもあり、ひとまず健康長寿のための食生活は満たしているといってもいい。そこで気になるのが、よく耳にする“これを食べていればいい”という食材についてである。

「食品には、ひとつの単体で、完璧な栄養を構成するものなど存在しません。健康にいいと信じて、何か特定の食品ばかりを多く摂取して食事が偏っていると、いずれ何らかの健康上の問題が出てきます。昔から食べ続けられている食品に、“よい・悪い”と区別をつける発想自体が間違っているのです。肉、魚、野菜、果物、穀類をバランスよく食べることが基本。加えていうなら、私の健康意識調査で、日本人に不足しがちなのは、緑黄色野菜、魚、海藻類で、これらを意識的に食べるといいですよ。さらに右図で紹介している、健康長寿の14か条を参考にしてください」

もちろん、痛風や何らかの疾患を抱える人は、医師から処方される薬をしっかり飲むことが大切。また、“メタボ”いう言葉に振り回されて、粗食&ダイエット方向に向かうのも、老化がどんどん早まる可能性があり危険だ。

「中高年こそ肉を食べよう」。それが元気に長生きすることを可能にするだろう。

 

柴田博(しばた・ひろし)
桜美林大学大学院老年学研究科教授/日本応用老年学会理事長
1937年北海道生まれ。北海道大学医学部卒、医学博士。東京大学医学部、東京老人医療センター、東京都老人総合研究所を経て、現桜美林大学名誉教授、人間総合科学大学保険医療学部教授、日本応用老年学会理事長。著書に『肉食のすすめ』(経済界)など多数。