人気に火がつき、3カ月の販売目標を2週間で達成
オンラインショップへの反響は大きかった。3カ月間の販売目標をわずか2週間で達成。山積みの在庫は完売し、グミッツェルの人気にも拍車がかかっていく。
一方、コロナ禍が長引くほどに店舗の存続は厳しくなっていき、2021年には大阪店の撤退が決まった。以前『利益が出ない店舗は撤退すべき』といわれた店舗だった。金澤さんにとっては、スタッフとじっくり育ててきた愛着のある店舗。身を切られるように悲しかったが、管理職として店舗運営者として、忘れられない学びを得たという。
「事業として利益が出なければ、どれだけ思いがあっても次へは進めないということ。だから、私は袋一枚でももっと原価を抑えられないかとか、しつこく言いますし、今は小さな会社を運営しているような気持ちでやっています。部下にはすごく嫌がられていると思いますけど(笑)」
オンラインだけでなくオフラインでも。「つなぐ」場を届けていく
コロナ禍ではオンラインショップの立ち上げに苦戦したが、その実績が会社全体のデジタル事業の推進につながった。
店舗の撤退というつらい経験もしたが、今後も「ヒトツブカンロ」の世界観やメッセージを届けるためにポップアップストアの出店は積極的に進めていく予定だ。
そんな金澤さんが大切にしているのは、「1日として同じ日は無く、ともに成長し、進化し続ける」という気持ちだという。かつては自分が欲しいものから発想を得て商品を企画していたという金澤さん。今は喜んでくれる人たちを思いながら、より長く愛される商品を見据えている。
1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。