ワコールのレースボクサーが売り上げを伸ばしている。消費者インサイトに詳しい桶谷功さんがその開発秘話に迫った。1枚4000円近くするレースの下着を男性が買う理由とは――。

※部署名、役職は取材当時のものです。

男性向け高級インナーは厳しい市場

――メンズインナーブランドである「ワコールメン」の販売状況はいかがでしょうか。

ワコール メンズインナー商品部課長 溝口曜(あきら)さん
ワコール メンズインナー商品部課長 溝口あきらさん(写真提供=ワコール)

【溝口】おかげさまでレース生地を使ったボクサーパンツ「レースボクサー」を中心に支持をいただいておりまして、昨年4月から今年の2月までの累計で、前年比160%以上の水準で推移しています。

――御社全体ではレディースの商品が圧倒的に多いと思いますが、メンズはどれくらいの割合ですか?

【溝口】男性の下着はなかなかシェアをとり切れませんね。男性は女性のように下着に対して高い意識を持っている方が少ない。そんな中でワコールメンは「追いつけない下着」をテーマに半歩先の提案をしようと取り組んでいます。高価格帯(レースボクサーは税込みで3960円)を狙っていることもあり、なかなか難しい市場です。

はいた時の驚きと感動

――「レースボクサー」の開発の経緯を教えてください。

【溝口】私がレディースからメンズインナーの部署に異動してきたのが2020年の4月。ちょうどコロナが大流行して世の中が大きく変わった時期です。そんな時だったので「メンズインナーに新しい風を吹かせたい」と思い、いろいろなことをやりました。レースボクサーもその一つです。

穿き心地に徹底的にこだわった「レースボクサー」
はき心地に徹底的にこだわった「レースボクサー」(写真提供=ワコール)

いまは「ジェンダーレス」とか「ボーダーレス」など、いろいろなものの垣根が低くなった、いわば「レス化」の時代ですよね。お客さまもそれを肌で感じとっているのではないか。そこへレース生地でできた男性用下着があれば、「おっ」と思うはずです。見た目は新しいのに、はいてみたらすごくなめらかではき心地が良くて、毎日快適にすごせる。この驚きや感動がリピートにつながるというストーリーが見えたので、それをお客さまに伝えていこうと思いました。