ただの「貯金持ち」はスケールの小さい人生を送る

【パパ】「たくさんお金を持っていれば『お金持ち』なのかもしれないけど、ただお金を貯めこんでいるだけであれば単なる『貯金持ち』に過ぎない。ただの貯金持ちは、多種多様な経験を積んでいない。だから、トラブルにも弱い。堅実であるがゆえに冒険したことがなく、“つまらない”ことが多い。私の偏見かもしれないけどね。いずれにせよ、節約貯金ばっかりしていると、スケールの小さな人生となるリスクをはらんでるってことだ」

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写真=iStock.com/hocus-focus
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【穣一】「たしかに、その同僚は貯金が趣味みたいな感じですね。昼食も手作り弁当だし、会社が終われば毎日一直線に家に帰ってて、『付き合い悪い』って言われてます。でも、そうは言っても老後の備えも必要ですよね」

【パパ】「老後が不安なら、老後も稼ぎ続けられる自分になることが一番確実で安心の方法だ。穣一くんの年齢だと、職業人生はあと40年以上続く。老後から人生が始まるわけじゃないし、現役時代が輝いてないと老後も輝かないんじゃないかな」

【慶太】「父さんがいつも言っている、『投資と消費と浪費』を区別しろ、ってことだね?」

【パパ】「そう。投資とは、株や不動産とかではなく自己投資のこと。消費は、日常の生活必需品。浪費は、単なる自己満足や見栄のための出費だ。特に20代は仕事で最も成長する大事な時期だから、ほとんどを『自分への投資』に充てるべきだよ」

20代は節約貯金よりも経験値を増やすべし

【穣一】「でも、そんなに使うところありますかね? 資格を取るとか?」

午堂登紀雄『人生の正解をつくるお金のセンス 17歳までに知っておきたい「使う」「貯める」「稼ぐ」「守る」「増やす」の考え方』(技術評論社)
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【パパ】「仕事をするのに不可欠だったり、昇進昇格に必要な資格なら取らなきゃいけないけど、『何かに備えて』なんていう漠然とした動機なら必要ない。社会人に必要なのは、テキストを読んで問題を解くという受験勉強の延長のようなものではなく、スキルや能力とか目に見えない仕事の実力に直結する勉強だよ」

【穣一】「さっき慶太くんが言っていたような、本を読むとか、勉強会に参加するとかですか?」

【パパ】「それもあるし、海外旅行も日本との違いを考察する勉強になる。優秀な先輩や上司を酒食に誘って話を聞くことも自己投資だ。一方、パッケージツアーだったら、ガイドブックに載っている名所をなぞるだけの“確認旅行”になってしまう。ただ会社の同僚と飲みに行って上司の愚痴を言うだけなら浪費だ。だから、投資的なお金の使い方を意識する必要がある」

【穣一】「つまり、20代は節約貯金よりも、まず自分の経験値を増やせということなんですね。そうか、全部使い切れってそういうことなんですね」

午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士

1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒業後、会計事務所、コンビニエンスストアチェーンを経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。IT・情報通信・流通業などの経営戦略立案および企業変革プロジェクトに従事。本業のかたわら不動産投資を開始、独立後に株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズ、株式会社エデュビジョンを設立し、不動産投資コンサルティング事業、ビジネスマッチング事業、教育事業などを手掛ける。現在は起業家、個人投資家、ビジネス書作家、講演家として活動している。著書に『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)、『決定版 年収1億を稼ぐ人、年収300万で終わる人』(Gakken)、『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』(日本実業出版社)、『お金の才能』『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』(かんき出版)など。