※本稿は、アルテイシア・田嶋陽子『田嶋先生に人生救われた私がフェミニズムを語っていいですか⁉』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
親から逃げるには結婚しかなかった
【アルテイシア(以下、アル)】ヨーロッパみたいに事実婚も法律婚も同じ権利があるなら、私は事実婚を選んでました。
私が法律婚を選んだ一番の理由は、毒親と戸籍上も離れたかったからです。独身時代は「もしいま救急車で運ばれたら親に連絡がいってしまう、延命処置とか治療の方針とかあいつらに決められるなんて死んでもイヤだ」と思ってました。本当は結婚したくないけど、親と折り合いが悪くて、親の支配や干渉から逃げるためには結婚するしかないのか……と悩む女性も多いです。
【田嶋】昔からそういう人は多い。親から離れたいから、なんでもいいからとりあえず結婚したいって。
その根本にあるのは、戸籍制度だと私は思う。戸籍なんてものは、今や日本と台湾にしかないんだよ。この制度は、台湾と同様、日本の植民地だった韓国にもあったけど、両性の平等を定めた憲法に反するとの理由から2007年に廃止されて、戸主中心から個人中心になった。戸籍制度は選択的夫婦別姓にも大きく関係すること。時代との認識のズレは否めないと思う。
【アル】家父長制の中で父親が母親をいじめて、母親が娘をいじめて……って家の中で弱い立場の人が抑圧されますよね。緊急連絡先とか手術の同意書にサインするとか、親族じゃなく友達でオッケーにしてほしい。
【田嶋】ほんとに、そう。私も近所の知り合いでいいと思う(笑)。
家父長制社会では育児や介護が女性に押し付けられる
【アル】家父長制社会は何もかも家族中心で「家族で助け合え」という価値観が根強くてクソですよね。そこで発生する育児や介護といったケア労働をさせられるのは、いまだに多くの場合が女性です。そうやって女に押しつければ、国は何もしなくてすむから。
【田嶋】本当だよ。家族中心なのがよくないね、女性の自由を奪う仕組みだから。結局、その家父長制の仕組みで犠牲になるのは女性なんだよ。
【アル】私も「家族は助け合うべき」という家族の絆教のせいで、父親に搾取され続けました。『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』に書きましたけど、父親に5000万の借金を背負わされて。
【田嶋】そうだったんですか。昔はそうやって、父親は借金を返すためだったり食いつなぐために娘を売ったものですけど――。それは本当にお気の毒でした。