ポイント3 内面から整えるにはポジティブな表現を使う

続いては、内面から表情を整える方法を見ていきます。経営の神といわれる故・松下幸之助氏も「性格や精気は顔に出る」と語っていたように、人の表情には、その人の思考や考え方の癖、生きざまなどが表れています。思考の癖は言葉の癖として表出しやすいため、考え方の癖を変える方法のひとつとして、使う言葉を変えるアプローチがあります。つまり、表情、言葉、思考はリンクしているとも言えます。

そこで、プラスの提案を心掛けるのはいかがでしょう。例えば、「○○したらダメです」「それは無理です」と言わずに「こうしたらいかがですか」と提案をする。「その件は分かりかねます」ではなく「ただ今お調べします」と言う。「今週は間に合いません」でなく「今週は間に合いませんが、来週なら大丈夫です」とプラスの提案をする。こうした前向きな言動を習慣化することで内面を整えていくのも一手ではないでしょうか。

もうひとつ、言葉から整えるとってもシンプルな方法が、感謝を表す「ありがとう」を習慣化することです。感謝の言葉を述べることで周りの人を明るくし、仕事を円滑に進めることができます。何より、人が一番聞いているのは、自分の発する言葉です。相手に対する感謝の言葉は、自分に幸福感をもたらすというペンシルベニア大学・セリグマン教授の研究結果もあります。

例えば、「わざわざすみません」「お手数おかけして申し訳ございません」という言葉を「お気遣いいただきありがとございます」「ご協力いただきありがとうございます」と言い換えてみましょう。決して難しく思わず、身近なことから始めたいですね。

成功者は表情を巧みに活用している

今回は、マスクを外す日常でも自信を持ってコミュニケーションを取るための印象の整え方について見てきました。最後に、表情について私が気付いたことをお話ししておきます。

仕事を通じてさまざまな分野で活躍する方々にお会いしましたが、成功されている人は、非言語コミュニケーションツールとして、表情を巧みに活用しています。そして、一流といわれる方ほど、笑顔が魅力的です。笑顔が魅力的な方の周りには、多くの人や情報が集まってきます。

忙殺されるときもあるでしょうが、それでも「笑顔」を絶やさないことはプロの流儀だと教えていただきました。ぜひマスクを外した日常で、ご自身の表情や話し方を整えて、自信を持ってコミュニケーションを図っていきましょう。

阿隅 和美(あすみ・かずみ)
WACHIKAコミュニケーションズ代表

青山学院大学経営学部卒業。中部日本放送アナウンサーを経て、NHK衛星放送キャスターとして、株式市況、世界のトップニュースを10年担当。20年にわたり、スポーツ、経済、情報番組に関わる。アナウンサー名は瓶子和美。現在は、TV現場で培った技術を活かし、ビジネス現場でコミュニケーション力を発揮し、成果を出す人材を育成する研修、講座、講演を行っている他、経営層・管理職、エグゼクティブリーダー向けプレゼン・スピーチのパーソナルトレーニングやコンサルティングなどを実施している。著書に『心をつかみ思わず聴きたくなる話のつくり方』(日本能率協会マネジメントセンター)、『仕事ができる人の話し方』(青春出版社)があり台湾でも翻訳されている。ホームページ