話し方や表情の印象が原因でチャンスを逃していないか
外資系企業勤務でエリート街道を歩むSさんが、ヘッドハンティングされました。実績は申し分なく、高額のオファーと今より上のポジションを提示され、転職は確実と言われました。ところが最終面接で、まさかの保留。
その理由をエージェントに聞いたところ、経営層が、「経歴は申し分ないが、話し方の印象がネガティブだ。表情が暗い。これでは部下の心を掌握できないし、社内折衝も難しいだろう。今回のポジションにはふさわしくない」と判断されてしまったそうです。
「話し方」でせっかくのチャンスを逃してしまったSさん。このように、いくら優秀であっても、印象で足を引っ張り、人生のチャンスを棒に振ることが現実に起こりえます。特に、人前や初対面の社内外の相手と頻繁にコミュニケーションを取る立場ともなれば、ご自身の印象を管理することは、必要不可欠です。
また、プレゼンテーションの場面で、第一印象の良しあしがその後の評価に影響を与えている可能性もあります。心理学の「ハロー効果」によると、人材を評価する際に、ある特定の評価が高いと感じた場合に、別の項目も高くしてしまうことがあるというものです。
例えば、落ち着いた表情、堂々とした話し方なら、プレゼンテーションの中身も価値あるものに違いないというバイアスがかかります。ただし、逆もあります。暗い、自信がなさそうな印象だと、内容までディスカウントして聞いてしまう傾向があるのです。
このように印象の重要性は知っていても、実際にご自身の印象について管理をしている方はさほど多くないようです。その理由が、自分の印象は生まれつきで、変わらないだろうという誤解です。表情によるご自身の印象は、どなたでも変えられます。表情は細かな筋肉の集合体のため、表情筋を簡単な方法で鍛えることで、表情も変わり自信がつきます。そして話し方の印象も、発声法や滑舌、表現技術を磨くことで影響力を高めることができます。
それでは、マスク解禁後の自分の印象に自信がつく今からでも遅くないポイントを3つご紹介します。
ポイント1 マスク生活で衰えた口元の筋力アップ法
「笑う門には福来る」という言葉がありますが、温かく柔和な笑顔は相手の心の扉を開く鍵といわれています。相手の心の扉が開かないうちに、いくら正論を熱心に述べても攻略は難しいでしょう。一方、笑顔でコミュニケーションを取れば、たったそれだけで聞いてもらえる可能性が高くなります。
日本語は、口を開かず、顔の表情筋を動かさなくても話せます。これが、日本人は無表情の方が多い一因かもしれません。そこに、マスク生活で無表情で話す「省エネモード」が染みついていると「表情筋」が衰えて固くなり、ご自身でコントロールしようとしても、きれいな笑顔が作りにくくなります。
それでは、表情筋をほぐして自然な笑顔を手に入れる簡単なトレーニング法をご紹介します。
表情筋と滑舌トレーニング
笑顔は、口角、頬、目、この3点を意識して作ります。
②頬の筋肉を無表情の状態よりも3センチ上にあげるような意識でキープする
③目を大きく開いて、眼輪筋(目の周りの筋)に力を入れる
トレーニングでは作り笑いでも心配ありません。筋トレだと考えてください。
では、次のステップです。この状態をキープしたまま母音練習で、表情筋を動かします。
日本語は、「あいうえお」5つの母音からなっています。
一つひとつの母音の口のかたちを正しく大きく動かして作りながら、表情筋を動かします。表情筋が柔軟になると同時に言葉の発音も明瞭になります。
・い……口角を上に引き上げる。この時、左右の口角が同じ高さになるようにします。口角の左右の高さが違うと卑屈な印象を与えます。
・う……唇をすぼめて、前に突き出します。
・え……「い」と同じように、口角を左右の高さが同じになるように引き上げます。
・お……「う」と同じように、唇をすぼめて、前に突き出します。
この母音の口の開き方を意識して「あいうえお」「いうえおあ」「うえおあい」「えおあいう」「おあいうえ」と反復練習をします。続いて、「いういう」体操(い・う・い・うの繰り返し)、「いうあ」体操(い・う・あの繰り返し)を追加します。朝、動かすと、表情と発音が整うだけでなく一日言葉が出やすくなりますので、歯磨きのついでに鏡を見ながら続けてみてください。表情筋の柔軟性が手に入り、ご自身の見せたい表情を整えることができます。