食欲や睡眠の状態変化はうつの大きなシグナル

うつ病では、食欲障害と睡眠障害が同時に生じることが多いです。

和田秀樹『ぼけの壁』(幻冬舎新書)
和田秀樹『ぼけの壁』(幻冬舎新書)

食欲に関しては、一般に、うつ病の人は食欲が減退します。そして、「不眠」もうつ病の典型的症状で、寝つきが悪くなる以上に、夜中に目が覚めてしまう「早朝覚醒」が多くなります。

ちなみに、認知症の人は、食欲が増すケースが多く、またよく眠り、ロングスリーパーになる傾向があります。そのため、これらの点に着目して、うつ病か認知症かの区別がつくこともあります。

そして、治療をめぐる最大の違いは、認知症は、今のところ、進行を遅らせることはできても、治癒することはできませんが、老人性うつは、適切に治療すれば、かなりの確率で治る病気だということです。

とりわけ、早期に発見し、治療を開始すれば、抗うつ薬がよく効き、90%くらいの確率で治ります。

和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)など著書多数。