コンプライアンス違反だけではすまされない可能性

会社にとってはパワハラの事実が発覚すれば、パワハラ防止法が規定する「事業主が講じるべき措置」を怠ったことでコンプライアンス違反に問われることになりかねない。それだけではすまされないかもしれない。別の社会保険労務士は「パワハラを受けて退職した社員が弁護士に相談したら、『ハローワークにパワハラで辞めたと申告してください。パワハラで退職したと判定されると、その後、会社に損害賠償を請求することもできますよ』とアドバイスされたそうだ」と語る。

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会社は自己都合で辞めたからといっても決して安心できない。ハラスメントを受けても約60万人が会社に伝えないで辞めていく実態があることを考えると、後で手痛いしっぺ返しを受ける可能性もある。パワハラ対策の強化など、ハラスメントを生まない職場環境の整備に早急に着手すべきだろう。

溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。