ハローワークで「パワハラを受けて辞めました」
会社にとってはパワハラが発生しても社内外に知られることもなく、静かに去ってくれるのはある意味でありがたいかもしれない。大きな問題にもならずにホッとしている管理職や経営者もいるだろう。
しかし、決して安心とはいえない。最近、多くの企業の顧問をしている社会保険労務士からこんな話を聞いた。
「パワハラの研修をやってくれないかという依頼が最近増えている。きっかけは退職した社員がハローワークに失業手当の給付手続きに行ったとき、『パワハラを受けて辞めました』と言ったことらしい。その後、ハローワークの担当者から会社の元同僚にパワハラの事実を確認する電話があったことで社長が知り、驚いたという。パワハラ防止法の違反にもあたり、なんとかしなければと焦っているようだ」
求職者給付を有利に受けられる「特定受給資格者」
ハローワーク経由でパワハラが発覚したケースはこの会社以外にも複数あるという。実はハローワークで雇用保険の「求職者給付」を受給する場合、自己都合退職者は一定期間(2~3カ月)の給付制限を受けるが、「特定受給資格者」に該当すると、給付制限もなく、給付日数も多くなる場合もある。特定受給資格者の要件の一つにハラスメントも入っている。
「上司・同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者、事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者及び事業主が職場における妊娠、出産、育児休業、介護休業等に関する言動により労働者の就業環境が害されている事実を把握しながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者」(ハローワークインターネットサービスより)
パワハラやセクハラ以外にもマタハラなど育児・介護休業法に違反する事案も該当する。この要件に該当すれば自己都合で退職しても、ハローワークが最終的に決定する。例えばパワハラの事実の有無が本人と会社の主張と食い違った場合、「事業主一方の主張のみで判定することはありません」とし、ハローワークが客観的な資料を集めて事実関係を確認して判定することになっている。判定するための一つとしてハローワークが元同僚にパワハラの事実を確認することもある。