86万人以上がハラスメントを理由に退職
コミュニケーションの行き違いによるいじめなどのハラスメントを引き起こし、ハラスメントがメンタル不調をもたらすという悪循環に陥る。実際にパーソル総合研究所の「職場のハラスメントについての定量調査」(2022年11月18日)によると、全就業者の34.6%が職場でハラスメントを受けたことがあると回答している。ハラスメント被害の内容は「自分の仕事について批判されたり、言葉で攻撃される」(65.1%)が最も多く、「乱暴な言葉遣いで命令・叱責される」(60.8%)、「小さな失敗やミスに対して、必要以上に厳しく罰せられる」(58.8%)という回答も多かった。
そんなことをされると会社を辞めたくなる人もいるだろう。実際に2021年にハラスメントを理由に退職した人は全離職者数の10.3%、86万5480人に上ることがわかった(厚労省の統計を基に簡易推計)。男女別では男性9.8%、女性10.9%とやや女性が多い。年代別では20代が15.7%、30代が14.3%に達している。
退職理由を伝えない人が大多数
驚くのはハラスメントや嫌がらせで退職した人のうち、退職理由を会社に伝えた割合が35.0%しかいなかったことだ。退職理由を会社に伝えていない人は65.0%、57万3000人に達する。伝えていない割合は男性が64.6%、女性が67.6%に上る。ハラスメントの退職理由を会社に伝えていない割合が高い業種では、宿泊業・飲食サービス業の72.1%、医療・福祉が68.6%だった。
なぜ伝えないのか。それを知る手がかりとなるハラスメントへの会社の対応では、「対応あり」が17.6%しかない。「認知していたが、対応なし」が37.2%、「認知しておらず、対応もなし」が45.2%を占め、社員のハラスメント被害に適切に対応していない企業が多いのが実態だ。パワハラ防止法が2020年に大企業に施行され、中小企業も2022年4月に施行されたが、実態としてはパワハラを受けても会社は何の対応もせず、泣き寝入りしているケースも多いことがわかる。