最後まで聞いてもらえないことを前提に話す

4つ目の心構えが、自分の話を相手に最後まで聞いてもらえないことを前提に話すということです。

緒方憲太郎『新時代の話す力 君の声を自分らしく生きる武器にする』(ダイヤモンド社)
緒方憲太郎『新時代の話す力 君の声を自分らしく生きる武器にする』(ダイヤモンド社)

「いや~、昨日会社に行ったんですけど、こんなことやあんなことがあって、これをやってあれやって、あの人と会議して……」と長々と説明した挙げ句、「まあでも、まだ全部終わってないので~」と、これまでの話を台なしにするような話し方をしていませんか。

こういった会話は、聞き手が最後まで自分の話を聞いてくれる前提で話しています。最後まで聞かないと要点が分からないという話し方では、聞き手を引き込むことはできません。

Voicyでは、パーソナリティが提供するエピソード一本ごとに、話のどの段階でリスナーが離脱したのかが分かります。

こうしたサービスでは、話し手(Voicyではパーソナリティ)の話を聞き手が最後まで聞く義理はありません。つまらないと思ったら、いつでも別の番組やルームに切り替えることができる。話し手にとっては厳しい環境です。

そんな中にいると、話し手は常に「相手が最後まで自分の話を聞いてくれるわけではない」ということを意識せざるを得なくなります。

おもしろくなかったら聞き手がいなくなる

聞き手がいつでも離脱することができるからこそ、常に相手を飽きさせず、「この人の話を聞いて良かった」と感じてもらえる話し方をする必要があるのです。

Voicyで、当初はトークがうまくなかった人が、話す機会が増えるにつれて「伝わる技術」が磨かれて、話がおもしろくなっていったケースを、僕はこれまでに何度も目にしてきました。

話がおもしろくなかったら、容赦なく聞き手がいなくなる──。

そんな緊張感のある環境の中で話すことを繰り返すと、「話す力」がどんどん磨かれていきます。

もちろん、そんな厳しい環境で話す技術を鍛えるのは、精神的に厳しいと思う人もいるはずです。ならばせめて、「最後まで自分の話を聞いてもらえないかもしれない」と意識するだけでも十分です。

マインドセットを変えるだけで、話し方も自然と変わってくるはずです。

緒方 憲太郎(おがた・けんたろう)
Voicy代表取締役CEO

ビジネスデザイナー、公認会計士。大阪大学基礎工学部卒業後、同大学経済学部も卒業。2006年に新日本監査法人に入社し、その後Ernst & YoungNew York、トーマツベンチャーサポートを経て起業。2015年医療ゲノム検査事業のテーラーメッド株式会社を創業、2018年業界最大手上場企業に事業売却。2016年音声プラットフォームVoicyを開発運営する株式会社Voicyを創業。同時にスタートアップ支援の株式会社Delight Design創業。新しい価値をビジネスで設計するビジネスデザイナーとして10社以上のベンチャー企業の顧問や役員にも就任し、事業戦略、資本政策、サービス設計、PRブランディング、オープンイノベーション設計、その他社長のメンターやネットワーク構築を行う。著書に『ボイステック革命 GAFAも狙う新市場争奪戦』(日本経済新聞出版)