ジョブ型実例②【KDDI】

日本型人事の良さを残しながら、プロを創り、育てる

携帯3社の一角、KDDIも人事制度改革に乗り出した。2020年8月、部分的な運用が始まり、21年4月に総合職に導入された「KDDI版ジョブ型人事制度」である。

KDDI 執行役員 コーポレート統括本部 人事本部長 白岩 徹さん
KDDI 執行役員 コーポレート統括本部 人事本部長 白岩 徹さん(撮影=市来朋久)※肩書きは、取材当時

ジョブは日本語でいうと「職務」だが、「KDDI版ジョブ」とは資生堂と同様、それより広い「専門領域」を意味する。具体的には、現在は30の専門領域が定められており、営業でいえば、コンシューマ営業、法人営業、営業支援、エンジニアでは、衛星・海底ケーブル系ネットワークエンジニア、建設ネットワークエンジニアといった具合。マーケティング、人事、アカウンティング(経理)といった部署名がそのまま名称になっているものもある。専門領域とグレードごとに、職務や必要なスキルがジョブディスクリプション(JD)として明示されている。自らの専門領域を決めるのは本人だ。

今回の改革では「上から統制する」という意味合いの強い管理職という名称がなくなった。その代わり生まれたのが経営基幹職である(それ以外の正社員は基幹職となる)。

経営基幹職の要件は2つあって、1つは部下を持つリーダーであること。もう1つが自身のジョブにおいて、社内で卓越したエキスパートであること。

執行役員人事本部長の白岩徹さんが説明する。「これまでの管理職は、試験を受けて合格すると、その地位にとどまり続けることが可能でした。場合によっては、部下なし管理職という存在が許されていたのです。役職というより身分という意味合いが強かったといえるでしょう。それができなくなった。今年は経営基幹職だった社員が来年は基幹職になるという『入れ替わり』があるということです」

KDDI版ジョブ型の概要図

若手でも早い昇進が可能に

しかも、これまでは新入社員が管理職になるまでに最低8年が必要だった。上のグレードに昇進するには、その下のグレードごとに、滞留年数が決められていたからだ。「今回はそれをなくし、新人でも最短2年で経営基幹職への登用が可能になりました」

経営基幹職は、従来の管理職のような地位ではなく役職を意味し、しかも実力があれば、年齢や勤続年数を問わず就くことが可能。男性はもちろんだが、腕に覚えのある女性にとっても大きなやりがいにつながるはずだ。

「女性には出産や育児といったライフイベントがあり、休職や短時間勤務を余儀なくされる時期があります。以前の年功序列のシステム下においては、それが不利に働き、管理職となると、男性の割合が圧倒的でした。実際には、部下を持つリーダーになりたいという女性も、ある専門領域のエキスパートになりたいという女性もそれぞれいると思います。新しい制度では、その両方に活躍の場を用意しています」