明日から実践できるコーチングの基本

部下と信頼関係を築ける、傾聴力のトレーニングにもなる部下のやる気やアイデアを引き出すワーク。

【やってみよう】「10分間1on1」信頼関係を築く対話ワーク

“1on1”を敬遠するリーダーは多い。本格的に導入するには専門知識が必要で、所要時間も最低1時間を要するためだ。しかし部下との信頼関係構築のためだけに限定的に応用できる方法がある。“10分間1on1”だ。お互いに苦手意識があり関係が希薄な部下と1対1で関係を改善する目的なら雑談に終始してもコミュニケーションの方法として試す価値はある。場所や時間の確保が難しい場合は、対面ではなくリモートでも効果は変わらない。

1 準備

基本姿勢は「相手には無限の可能性がある」という考え方。上司はこれを踏まえて部下と二人きりになれる場をもうけて向き合う。その際は職務上の上下関係を外し、相手のありのままを受け入れる姿勢で傾聴すること。あくまでも自分の関心事ではなく、相手が話したいことを聞く姿勢が大事。

2 自己開示

話しやすい場にするために雑談を交え、お互いのことが少しでも理解できるように自己開示していく。そのあと部下が話したいテーマを1つ決める。「学生時代にがんばったこと」など仕事以外のプライベートなことでもよい。ただし詮索はしないこと。また自由に話せるように守秘義務は厳守する。

3 相手の感情を聞く

部下にテーマについて5分程度話してもらうが、上司は話の内容だけでなく、特に非言語メッセージに意識を向けて傾聴する。相手の感情を理解する訓練になり、傾聴力を鍛えることができる。話を聞きながら、相づちを打ったりうなずいたりして「聞いている」という態度を示すことで相手の安心感が増す。

4 振り返り

最後の1~2分で振り返り。上司、部下ともにお互いに感じたことや気づいたことについてざっくばらんにシェアし合う。その際、否定的なコメントは基本的にしない。建設的なコメントをし合うことで信頼関係が深まる。これを2週に1回程度3カ月ほど行う。相互理解が深まれば信頼度が増す。

部下の力を引き出す7つの項目

傾聴力があれば部下との信頼関係は構築できるが、ただ話を聞ければいいわけではない。どうしても必要な場合を除いて指示命令は極力しないようにする。部下の能力を引き出し、主体性を発揮してもらうには、指示命令ではなく、7つの項目による質問によって「どうしたらいいのか?」を部下に自ら考えさせ、自分で答えを導き出す力を身につけさせることが重要。質問して考えさせることによって、自走型のチームに育っていく。具体例は以下に。

部下が自ら動き出す対話例
部下の主体性をそがない、軌道修正法「愛のツッコミ」とは

上司が指示命令をせず、部下の主体性をそがずに間違いを軌道修正するにはどうしたらいいか。1度は「なるほど」と認めた後、ツッコミを入れることだ。上司が間違いを正して従わせるのではなく、不具合箇所や疑問について質問することで問題点を明確にする。部下が説明をしていく中で自ら矛盾や間違いに気づき修正してくるまで、上司は根気よくひたすら大きな愛をもってツッコミ続けることが大切。

構成=モトカワマリコ イラスト=谷山彩子

國武 大紀(くにたけ・だいき)
エグゼクティブコーチ

組織変革コンサルタント。Link of Generation代表取締役。銀行、JICA(国際協力機構)を経て留学後、外交官に従事。コーチング、リーダーシップ開発や組織変革を専門に活躍。近著は『その「ひと事」でチームが変わる 最高のフィードバック』(大和書房)。