「最後の出口」が生き続けるための救いになる
もちろん、決して自殺を肯定しているわけではありません。
しかし、みずから命を絶つことが「最後の出口」として残されていることが、その人が生き続けるための救いになる。出口が存在するからこそ、もう一日生きてみようと思える。そんな状況があるのです。
その一方で、世のなかには「人には死ぬ権利があるはずだ」「自殺は死ぬ権利を行使することだ」と反論し、自殺を正当化する人がいます。
しかし、それは間違った捉え方です。自殺は「生きる権利」を行使できなくなった結果、起きるものです。
生きる権利というと難しく感じるかもしれませんが、単に、自分が毎日普通の暮らしを続けていくこと。それが、僕たちが生きる権利を行使し続けるということです。
ところが大きな困難に見舞われたとき、人は孤独に苛まれ、自分が当たり前に使っているその権利を使えなくなり、死を選びたくなってしまうのです。生きることができないから死を選ぶしかないのに、「死ぬな」と言われると、袋小路に入って途方に暮れるしかありません。
そんな人を一人でも減らしたくて、僕はずっと「死んでもいいけど、死んじゃだめ」と言い続けてきたのです。
僕たち相談窓口の役割は、追い詰められた状況にある人から出口を奪うことなく、そこに近づこうとしているその人に寄り添って、生きる方向へと進路を変えること。必ず存在する別の出口にその人が気づけるよう勇気づけ、話を聴くことです。
1998年愛媛県松山市生まれ。慶應義塾大学総合政策学部在学中にNPO法人「あなたのいばしょ」を設立。24時間365日無料で利用できるチャット相談窓口を運営。孤独・自殺対策をテーマに活動している。内閣官房孤独・孤立の実態把握に関する研究会構成員、内閣官房孤独・孤立対策担当室HP企画委員会委員など。著書に『望まない孤独』『「死んでもいいけど、死んじゃだめ」と僕が言い続ける理由:あなたのいばしょは必ずあるから』。