勝手にブラジャーを奪えば場末でもつまみ出される

そんな中、先般週刊誌でクラブホステスに対する過度なセクハラが報じられた俳優の振る舞いは、記事を読む限りにおいては、場末のキャバクラでもつまみ出されるレベルではある。私が人生で出会った最も許し難い痴漢は、ラッシュ時の横須賀線でスカートの中に手を入れてきた挙句、生理用ナプキンをべりっと剥がして持っていってしまったヤツなのだが、それは性加害である以前に窃盗でもあるわけで、ブラジャーを一瞬でも勝手に奪うのはそれに準ずる犯罪行為に思える。好意的に見ても「酒癖の悪い銀座の客」という枠に収まり切らず、最もよく似ているのはゼロ年代初期のタチの悪いイベサーの飲み会なので、歌舞伎の血統や高学歴な背景が役者としての品格に大きなハクを与えていた彼の場合、イメージの世紀末的な悪化は免れ得ないだろう。

まず瑣末な話を先にしてしまえば、店側の判断ミスもなくはない。有名人、金持ち、しかも頻繁に飲み歩く生態となれば、できればその場でつまみ出して出禁にはしたくないという気持ちが働いてしまうのが夜の常だが、そしてその常が、VIPは何しても許されるという、稀にある勘違いを生み出してきたのも事実だが、この種の酔っ払いは甘やかすと次回はさらに調子に乗るので店としてはこいつをつまみ出して従業員を守るべきだった。どんな格安デリヘルだって、暴力的な客を従業員の女の子より大切にするような店はすぐに潰れる。

ナイトクラブでシャンパンのグラスを持っている女性
写真=iStock.com/skynesher
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「酒に酔っていたから」という言い訳は聞き飽きた

酒癖というのも話の本質ではない。お酒の場のことですから、とか、酒に酔っていて覚えてません、とかいう言い訳をこの世に生まれてから500回ほど聞いてきたが、酔っている状態というのはその人の勝手なのであって、こちらには全く関係がない。故にそんな言い訳されても許す筋合いがない。かといって、酒癖の悪いVIPは飲まない遊ばないという選択肢しかないのか? という話でも全然ない。重要なのは、どこか早い段階で自分の飲み方を自覚し、いろいろな意味で守ってくれる場所を見つけておくことだ。

酒癖が悪いけれど大きなトラブルのない男というのは大抵、その人の子守り的な男女が複数人いて、それはつれ歩いている後輩であったり、お店のママだったりするのだが、その人が危ない目に遭わないようにというよりは、その人が人を危ない目に遭わせないように、やばそうなら強制連行したり、二階で寝かせたりしてくれる。どうせ酔っているので、部下に頭を叩かれても覚えてはいない。

そのような真のVIP扱いをされるには、部下にもいく先々の夜の蝶にもこの人は酒癖は悪いけれどもいなくなったら超困るし、なんだかんだ大好き、と思われていなければならない。そのような魅力と人望がないのであれば、ぜひとも家で缶ビール片手にVRのあのメガネみたいなやつでも嵌めて、バーチャルなキャバクラなどで遊んでいただきたい。保護者なき酔っ払いは捨てる紙のついていないチューインガムのようなもので、迷惑で不快で痕が残る。