一過性で終わるのではないか

男性の育児休業取得率を公表したとしても、その中には取得日数は含まれない。取得率が高くても、厚労省の調査のように「5日未満」の取得者がほとんどということになれば、女性の負担が軽減されるとは思えない。

政府の情報開示の動きについて建設関連業の人事担当者は冷めた見方をする。

「今の時点では情報開示項目も自社の都合で選べるし、強みを出せるといえば出せる仕掛けになっている。また、今後、開示義務の項目が増えると、BtoCの業界は直接、消費者に影響を与えるのですごく気にするだろう。しかし、うちの業界はBtoBの業界であり、あまり気にならないし、女性管理職比率や男性の育児休業取得率も同業他社もそれほど高くないので焦る必要もない。そもそも今の情報開示の取り組み自体が結局、お金(投資)が集まるかどうかだろう。投資の動向しだいでは一過性で終わってしまうのではないか」

女性活躍の実効性を高める目的があるにしても、情報開示の仕組み自体に大きな”穴”が潜んでいる。岸田首相肝いりの政策もこのままでは笛吹けど踊らずの状態になりかねない。

溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。