1枚のチラシがはじまり
ポストに投函されていた、1枚のチラシがきっかけだった。それは名古屋市内にオープンするショッピングセンターの広告で、テナント店舗の求人情報がずらりと並んでいた。なかでも気になったのが、婚活業界大手のツヴァイが初出店する店舗の求人広告。
結婚して岐阜で暮らす深見さんはずっとエステショップで働いていたが、その会社が倒産。次の仕事を探していたところ、名古屋の夫の実家でたまたま目にしたのがそのチラシだ。「マリッジコンサルタント」という営業職を新規採用する求人を見て、すぐに応募する。31歳のときだった。
「昔から友だちのお世話係というか、私の結婚式で引き合わせて結婚した人も多かったので趣味のようになっていて(笑)。チラシには幸せのお手伝いをする仕事と書かれていて、何だかすごく楽しそうだなと思いました」
「もっと経験がある人と代わってちょうだい」
2009年3月に採用され、アルバイトとして入社。研修中は覚えることの多さに圧倒されつつも猛勉強し、熱い思いで現場へ飛び込んだ。そもそも「マリッジコンサルタント」とはどんな仕事なのだろう。
「来店されたお客さまには、今までの恋愛観や婚活のご経験などをいろいろお伺いします。入会を迷っている方や、通りがかりで興味を持ったという方も多いので、婚活して幸せになろうという気持ちを促せるように背中を押す仕事ですね。専用アプリがあって、お客さまが選んでどんどん活動していくケースと、こちらから自動的にご紹介するパターンもあります。自分から積極的に会えない方にはお見合いのセッティングをしますし、結婚までのお手伝いもさせていただいています」
交際が始まっても、「メールが途絶えた」など相談を受ければアドバイスをし、婚活サポートを続けていく。当人同士で順調に進んでいけば退会の連絡がくる。ツヴァイで出会った二人が結婚するケース、さらには婚活を通して新たな場で出会いを得る人もいるという。
当時、マリッジコンサルタントといえば、40代から50代の結婚歴が長い女性たちが活躍し、30代の深見さんは新米だった。最初は問い合わせの電話を受けても、「あなた、若いわね。もっと経験のある人と代わってちょうだい」と言われてしまう。わが子の婚活相談をする母親も多く、若い担当には任せられないと躊躇された。
だが、深見さんはひるまなかった。そこでひるんでしまうと、同じ理由で電話を変わり続けるループに入ってしまうと思ったからだ。相手が不安に思うポイントを解消することを意識しつつ、自分なりの営業スタイルを試行錯誤しながら身に付けていった。