毎朝欠かさないメンバー全員との電話

マネジメントで力を入れたのは、マリッジコンサルタントの心のケアだった。現場ではお客さまの悩みを受け止め、クレーム対応にも追われる。営業数値もモチベーションに関わるので、一人ひとりと面談する機会を設け、毎朝必ず全員と電話することを欠かさない。毎日電話することで今日は声に元気がないなど、ささいな変化に気づけるのだという。

昨年10月にはセールス部の部長に就任し、現在は35名の部下のマネジメントを行っている。やはり不安は大きかったが、管理職になることで現場を担う女性たちの声を上部に伝えていければと努めてきた。

30代で婚活業界に転職し、出産、子育てなどライフスタイルの変化と向き合いながら、ステップアップしてきた深見さん。その中で考えてきたことは、子どもの成長に合わせて優先順位を変えていくことだ。子どもたちが小さい頃は優先順位も子育てが9割を占めていた。だが、成長するにつれて仕事モードに少しずつ切り替えられるようになった。最近ではさらに子どもから手が離れ、今後のキャリアを考え始めている。

深見さんが忘れられない言葉として大事にしているのは、かつて沖縄出張中に経験した子どもの事故後に上司から言われたひと言だ。

「あのとき上司から『頑張り過ぎちゃダメだよ』といわれ、肩の力がすっと抜けました。あ、すべて頑張らなくてもいいんだと思えたら楽になり、人生の中で自分が今やるべきことは何かと取捨選択できるようになったんです」

深見さんは最近10年ぶりにサーフィンを再開した
写真提供=深見さん

今はその言葉を部下の女性たちにも伝えたいと思う。マリッジコンサルタントとは「幸せのお手伝いをする仕事」。そのためにはまず自分自身も幸せであることが大切だろう。

深見さんは最近10年ぶりにサーフィンを再開した。かつて夫と二人で通っていた海で波に乗ることが幸せなひと時になっているようだ。

文=歌代幸子

歌代 幸子(うたしろ・ゆきこ)
ノンフィクションライター

1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。