昼間働けて生活が安定した「本番行為」

「昼間の仕事、探してんだけど、全然なくて、もう超やばいんだけど」

真希さんは、小学校以来の友人に愚痴を吐いた。ただ、それだけだったが、ここが人生の大きな転機となった。友人の口から、予想もしないことが語られた。

「実は私、吉原で働いていたことがあるんだ。別に勧めるわけじゃないけど、短時間でガッツリ稼げるし、保育園に出す証明書も会社名で作ってくれるし、子どもの病気で保育園からしょっちゅう電話がかかってきても、全然、大丈夫。普通の会社だと、それで、クビになったりするじゃん? もし、やるんだったら、紹介するよ」

真希さんは、この話に乗った。大きかったのは、昼間に働けることだ。この仕事に変えたことで朝9時から18時まで子どもを保育所に預け、自身は10時から16時まで働き、夜は子どもと一緒に過ごすという日々が始まった。おかげで、子どもには20時就寝という規則正しい生活サイクルを作ることができた。

実際、それはどんな仕事なのか。

「お店は“高級サウナ”と看板を出していますが、本番行為を行うところです。1人50分のコースが多かったと思います。昼間でもお客さんは来るので、週4日やって、トータルで月50万ぐらいになったと思います。お客さんが1人つけば1万円、1日に5人つけば5万円です。そこから雑費を3000円ぐらい引かれて、4万7000円をその日に手渡しでもらえます」

夜の仕事をしている女性
写真=iStock.com/maruco
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真希さんは「本番行為」と、何の躊躇もなく真っ直ぐに語った。予想もしない展開に、度肝を抜かれた。正直、動揺を隠しきれたか定かではない。そうだ、真希さんは自ら志願して、「ありのままの自分」を伝えにやってきたのだ。それは、自分は決して恥ずかしいことなどしていないという、自負があるからだ。

1人1万円、という具体的な数字も初めて聞くことだった。さらに驚きなのが、その「お店」では、性産業で働いていることをカモフラージュするための、さまざまな手段も用意されていたことだ。

真希さんは化粧品とアクセサリーの販売を行う会社員ということで、社員証が発行され、役所への提出書類として必要なら勤務証明書だけでなく、販売員としての給与明細も出してもらえるという、ダミー会社もあった。