火山灰の量が少なくても車移動は危険になる

火山灰はマグマが急に冷えて固まったものだから、草木を燃やしたときに出てくる灰と異なり、主成分は硬い岩石である。だから、フロントガラスに火山灰がくっついたといってワイパーをずっとかけていたら、火山灰がフロントガラスを削ることになる。

フロントガラスはすりガラス状になって、前が見えなくなるだろう。それに火山灰が路面を覆うと、道路上の白線が見えなくなる。センターラインが見えなくなったらどこを走って良いのかよくわからなくなってとても危険だろう。

こういった問題が複合すると事態は深刻だ。スリップした車や、フロントガラスがすりガラス状になって前が見えなくなった車、センターラインがわからなくなって衝突事故を起こした車、などなど、いろいろな理由で走行できない車が道路上に増えるかもしれない。

すると、事故渋滞が同時多発的に生じるのと同じこととなる。だから「厚さ3cmまでは移動可能」などと楽観的に考えるのは危険だ。車での移動に不確定な要素が多いことを計算に入れておくべきだろう。

飛行機はエンジン停止し、空港は長期間にわたって閉鎖される

飛行機は滑走路の火山灰を除去しなければ離着陸ができないが、空港に火山灰が積もっていなくても上空を流れる火山灰を警戒して、航空会社は運航を止める可能性が高い。

現在多くの旅客機はジェットエンジンの力で飛んでいる。ジェットエンジンは大量の空気をエンジンの中で圧縮し、燃料を燃焼させるが、空気に火山灰が含まれているとエンジンの中で溶けたガラスになり、エンジン内部にぺたぺた張り付いてしまう。これが過ぎると、エンジンが詰まってしまって停止して、墜落の危険がある。

噴火した火山
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火山噴火に遭遇して飛行中の飛行機のエンジンが止まる事故は過去に何例かあって、航空業界では極めて厳しい運航基準を設けている。2010年にアイスランドのエイヤフィヤトラヨークトル火山(この火山の正確な発音はアイスランド人以外には無理なので、国際学会でもみんな苦笑いをしながら発音をするので面白い)が噴火したが、この時はヨーロッパ上空の広い範囲に火山灰が到達したため、1週間にわたってヨーロッパの空港が閉鎖された。

宝永噴火は2週間以上も噴煙の高さが11kmを超える噴火が断続的に続いたが、これはエイヤフィヤトラヨークトル火山の噴火よりも長く噴煙高度も高い。したがって、宝永噴火並みの噴火が現代の富士山で発生したら、かなり大きい問題となるだろう。

ちなみに、現在、日本で貿易額最大の「港」は成田国際空港で、貿易総額の6分の1くらいのシェアを占めている。富士山が火山灰を放出したら、おそらく成田空港は閉鎖になるだろう。加えて、風向きがどうなるかは噴火の時にならないとわからないので、関西国際空港だったら大丈夫とはいえない。