就業継続を希望しながら、出産前に離職する女性たち

妊娠・出産・育児を理由として退職した女性へのアンケート調査(※1)では、離職時に同じ会社での就業継続を希望していた人は45.5%いる。同調査で、利用できれば仕事を続けられた支援やサービスを聞いたところ、「保育園・託児所(ゼロ歳児保育、延長保育、病児保育等を含む)」(53.7%)や「職場の育児との両立への理解、制度が利用しやすい雰囲気づくり」(36.7%)などが上位に並ぶ。職場環境や保育所の確保などの不安から、育児休業の取得どころか就業継続自体を断念している女性も少なくない。

妊娠中の女性が休日に自宅で仕事
写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです

そもそも厚生労働省が公表している女性の育児休業取得率は、一定の期間において「在職中に出産した女性」に占める「育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む)」の割合、すなわち「在籍ベースの育児休業取得率」であり、出産前に離職した人は分母から除かれている。そこで、出産時の職業の有無を問わない、出産した女性に対する育児休業取得者の割合(出産ベースの育児休業取得率)を推計し、在籍ベースの育児休業取得率と比較したものが図表1である。

女性の育児休業取得率の推移
出所=厚生労働省「雇用均等基本調査(旧・女性雇用管理基本調査)」「人口動態統計」「雇用保険事業年報」をもとに大和総研作成

出産ベースの育休取得率は45.6%にすぎない

在籍ベースの女性の育児休業取得率は2006年度に初めて8割を超えて以後、2020年度まで80%~90%前後で推移している。一方、出産ベースの女性の育児休業取得率は2006年度時点では12.0%に留まり、この時点ではまだ出産する女性が育児休業を経て復職するケースは珍しかった。その後、出産ベースの女性の育児休業取得率は年々上昇し、2020年度現在では45.6%となっているが、それでもなお在籍ベースの81.6%とは大きな開きがある。