上司の意識改革や育成スキル向上に着手

【東】課長層も現段階ではまだまだ低い状態にあります。女性のさらなるキャリアアップには上司の支援が必須となることから、選抜された女性課長と上司向けの研修や、リーダーシップ育成プログラムなどを実施しています。このプログラムの最終プレゼンでは、グループごとに「女性管理職を増やすために必要な施策」を考え、提言してもらっています。

一方、リーダー層では管理職を希望する女性の少なさが課題でした。そこで、従来の固定観念を取り払って自分らしい管理職像を描けるよう、本人の意識改革を目指す研修や、その上司向けの研修などを開始しました。

【木下】変革するうえでいちばん大事なことは何だと思われましたか?

【東】大事なのは、女性部下を育成する立場にある上司の意識改革や育成スキルの醸成だと感じています。人事が研修でいくらモチベーションを上げても、彼女たちが職場に戻ったときに「何も変わらない」と感じたら、またモチベーションは下がってしまいます。そして、一度下がったモチベーションをもう一度上げることはなかなかできません。

この状況を防ぐためには、上司が「サポートするよ」という姿勢を言語化することが重要です。ですから、女性課長職層のプログラムには上司も巻き込み、研修後10カ月間にわたって毎月、上司と女性参加者が1対1で話し合う「キャリアカンバセーション」を実施しています。具体的なキャリアプランやアクション計画を立ててもらうとともに、毎月進捗を確認する仕組みもつくりました。

【木下】なぜ女性活躍推進が必要なのか、納得のいかない男性管理職も多いかと思います。どう巻き込んでいくのが効果的でしょうか。

【東】「性別に関係なく活躍の場を与えるべき」という考え方はある程度浸透してきていますが、いきなり「男女平等だから女性を活躍させろ」と言っても、腹落ちしてもらうのは難しいですよね。当社では、「公平性」というコンセプトを周知することに力を入れています。すべての人に同じ対応をする「平等」とは違い、「公平性」は個々の違いに応じて必要な対応をするという意味。女性活躍推進には、公正な機会が公平に提供される場を整備していくことが大事です。

現状で女性が公平に活躍できていないのであれば、障壁を特定して徹底的に取り除いていく必要がある――。そこを全員に理解してもらおうと、2020年から、全課長と全部長が参加する研修のテーマに「インクルーシブリーダーシップの考え方」と「無意識のバイアス」を入れました。無意識のバイアス研修では、女性の活躍を阻害している要因を学ぶほか、性別をはじめとしたさまざまな違いに対する思い込みを外そうということを徹底的に伝えています。

木下明子編集長
撮影=小林久井(近藤スタジオ)