iDeCoを使って老後資金を貯める

老後資金についても、現状のままですと困ったことになるというのがわかります。ではその対策ですが、ある程度の準備が必要になります。とはいっても教育資金のために毎月3万円を「つみたてNISA」で貯蓄しているので、それほど余裕はありません。

ということで、iDeCoを使って月額2万円積み立てることにしました。iDeCoも税制優遇があり、効率的に貯めることができます。月額2万円を60歳までの18年間積み立て、1%で運用できたとします。

60歳の時点では、積立元本は432万円になり、運用益は41万円です。元本と運用益を合計すると500万円近く貯めることができそうです。ここで大きいのは、iDeCoは掛金の全額が税制優遇されるということです。税制優遇の総額は65万円になります。

iDeCoの掛金年間24万円が、所得税、住民税の控除になります。所得税は5%だとしたら、住民税の10%と併せて15%の控除になります。年間24万円×15%=3万6000円。42歳から60歳までの18年間ですので、64万8000円。総額約65万円の税金が安くなると言う計算です。これは大きなメリットになります。

iDeCoのメリットは、運用益が非課税になるということです。通常、運用益には、20.315%の税金がかかりますが、それがかかりません。

また、受け取る時には、一時金で受け取る場合には「退職所得控除」、年金で受け取る場合には、「公的年金控除」が使えるので、税金が安くなります。

老後生活の安定のために年金を増額させる

教育資金は、つみたてNISAを使って約300万円の準備、老後資金ではiDeCoを使って約473万円を準備をすることができました。

長尾義弘『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの? 教えてください。』(河出書房新社)
長尾義弘『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの? 教えてください。』(河出書房新社)

しかし、長い老後を支えてくれる、もっとも大きな収入は年金です。もし、65歳までこのまま働いたとしても、月額14万円の年金受給額です。やはり、月額14万円の年金だけでは、心もとない金額です。そこで、なんとか年金の増額を考えたいものです。

まずは70歳まで働くことによって、さらに年金の受給額をアップさせることができます。また、70歳まで働けば、その間の給与があるので生活費はなんとかなります。そこで年金を70歳まで繰下げ受給をすることにします。

繰下げ受給をすると年金は増額になります。1年繰り下げれば、8.4%の増額、70歳まで繰り下げることで42%の増額になります。

結果、70歳からの年金受給額は、約21万円になります。これで、なんとか安定した老後生活を送ることができそうです。

一人暮らしの老後生活が破綻しないための余裕資金の備え

60歳で退職になるので、退職金を受け取ることができると思います。退職金額は具体的にはわかりませんが、iDeCoの約473万円と合わせれば、ある程度のまとまった余裕資金になります。老後は一人の生活が続くと予想されるので、この余裕資金はとても大切になります。できるだけ手をつけたくはありません。

老後生活の突然の出費というのは、たとえば、子どもの結婚、孫の誕生、子どもの住宅購入などがあります。さらに大きな問題は、おひとり様の老後の場合には、介護の問題が大きいです。生命保険文化センターの調べによると、介護費用の平均的な総額は、581万円必要になると言われています。このための費用としても、ある程度の余裕資金を持っておくようにしましょう。

これで、なんとか子どもの教育費を確保しながら、自分の老後資金対策にもなんとか目途が立ちそうです。毎月の積立や大学のときの教育費の負担は大きいのですが、こつこつと積み上げた努力が自身を支えてくれることになるでしょう。

長尾 義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表、ファイナンシャルプランナー、AFP

徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)、『とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?』(青春出版社)、監修書には年度版シリーズ『NEW よい保険・悪い保険』(徳間書店)など多数。