教職員も悩んでいる

【山本】ものすごく気持ちわかります。我々はそうした校則は去年なくしました。

【内田】この時流にのってなくしたということですか?

【山本】おっしゃる通りです。まず、本校はまじめで優しい先生が多いです。それは校則があったときもそうで、厳格な校則があるからといって教師全員が校則原理主義的な考えではないです。

まず報道についての所感から申し上げますと、極端な校則を強いていることでやり玉に挙がるような先生は実は全国、そんな多くないと思っています。繰り返しますが、報道によって「教員は子供たちを杓子定規に規制している。そんな先生のマインドを変わるべきだ!」と思われている方がいらっしゃったら、それは一般論ではない、と僕は伝えたいです。教職員も一人一人悩んでいると思うのです。

特に昨今の学校は、組織連携や体制強化といった首長や教育委員会からの統制が非常に厳しく、教職員一人一人が自由に物事を判断して、子供たちに向き合うということがとてつもなく難しくなっています。実際に、学校に寄せられるクレームのほとんどが、教職員一人一人の考えや判断を尋ねるものではなく、「学校としてどうなのか! 教育委員会に確認して指導してもらうぞ」「市長にメールして抗議する」といったように、トップダウンのピラミッド構造を前提として学校教育が見られているという現実があります。教職員はみんな、自分で考えて判断する。目の前の子供たち一人一人の個性や発達に合わせた向き合い方をするということが本当に難しくなってきました。

そんな中でも、校則を前提とした生徒との関わり方について先生方も一人一人悩んで苦しんでいたのです。なので、「せっかくだったらみんなで本当に思っていることを話し合いませんか?」「保護者や地域住民からのクレームを恐れて何もしないというのも本来はおかしい話だよね。我々は教員として目の前の子供たち一人一人を大切に考えるという当たり前のことを自信をもってやってみよう」と校則を含めた生徒指導、生徒との関わり方についての議論を始めました。

はじめに話題になったのが「『服装や外見の規定違反』によって『学習を受けさせない』ことはおかしいのではないか」でした。本校では校則に違反している場合、教室に入れない方がいいのではないかと考える人もいたからです。

靴下の色って気になるものか?

でも、「そもそも『靴下の色』『靴の色』って、気になりますか?」と。例えば派手か地味かなんて、人によるのではないか、とか議論していった結果、これはいらないよね、となくしていくことになりました。