地域からのプレッシャーも
【内田】こうした規則について「自分で考えて行動してほしい」と依頼すると「決めてくれ」と言われちゃうこともある。「それは本当に子供が主体的に成長していけるのか」と先生が疑問に思っていらっしゃっても、なかなか発信することはできないですよね。
こころさんは地域や保護者のプレッシャーなど感じることはありますか?
【こころ】保護者は地域によって全然違いますね。また、服装などが白黒紺など、前の学校にもありましたが、「生徒は誰も守っていないし、教師も誰も注意しない」学校もあります。それで特に学校がおかしくなるわけではないです。ちなみに高校入試の時は、生徒は華美なものを履いてはいきません。
【内田】ほー。先生方はご異動されていくと思いますが、例えば校則、もしくはその運用が「緩くても問題なく回っていた」例を知っていて、厳しいところに移った場合、それを指摘するなどはあまりないのでしょうか?
【こころ】縛りすぎの時は、そうしたことをきっかけに議論になることもあります。でも例えば、子供も保護者も、その校則が当たり前になっていると、「変えてくれ」とクレームがこない。
【内田】先生からは変えようという話にもならない?
【こころ】「子供がそれでいいなら」、積極的に変えるという議論にならないと思います。中学校、義務教育ではある程度、「社会ではこうしなければいけないということを身に付ける時期」という共通認識があると思います。「何でもかんでも自由でよいか」と考えると、最低限のことを教えなければいけない時期でもあるのかな、と思います。
例えば入社式を金髪で受けに来る大人って現実にはそんなにいないですよね。社会におけるいわゆる「通常」をどこかで感じている子供の中にもそうした考えから「学校に赤い靴を履いてくることに違和感をもっている」場合があるわけですね。
正直言えば、全ての校則を廃止するのが楽だけど
通学時のセーター着用不可や靴などの色指定など意味のわからない校則は廃止すればよいと思いますが、義務教育の段階での染髪やピアス着用を認めることに関しては反対です。私も、正直言うと、全ての校則を廃止して自由にするのが一番楽です。生徒とも保護者とも揉めることがなくなるので。しかし、すべてを自由にすることにより、それが「当たり前」になり、TPOを知らないまま大人になってしまう子もいると思うのです。
令和2年度より生徒指導部長として勤務校の校則改革を行い、各種メディアに取り上げられた。
2016年8月より教育現場の情報発信を続け、国会や文部科学省への署名提出、国会への参考人陳述等を行う。共著に『迷走する教員の働き方改革』(岩波書店)、『教師のブラック残業』(学陽書房)がある。
1976年生まれ。専門は教育社会学。ウェブサイト「学校リスク研究所」を主宰し、また最新記事をYahoo!ニュース「リスク・リポート」にて発信している。著書に『学校ハラスメント』(朝日新書、近刊)、『ブラック部活動』(東洋館出版社)、『教師のブラック残業』(学陽書房、共著)、『教育という病』(光文社新書)などがある。ヤフーオーサーアワード2015受賞。Twitterアカウントは、@RyoUchida_RIRIS