最終面接での質問にひるまず内定ゲットした“殺し文句”

私は今の会社が4社目です。といっても前職2社はグループ会社であり、最初に入った会社も同じ広告業界でしたから、決して突拍子もない転職をしたわけではありません。ただ最終的には学生時代から憧れていた今の会社でどうしても仕事をしてみたい、という気持ちを捨て切れませんでした。それは何度も寄せては返す波のように私を捉え続けました。

その目的のために転職を繰り返し、30代のほとんどを非正規雇用の不安定な立場で過ごすことになりました。東京の会社を辞め、九州に飛び込んで実績を積み、親の病気もあって再び東京に舞い戻り、目的地に向かって試行錯誤を重ねながら、リスクを承知で賭けに出ました(この話はいつかどこかで)。

何度も諦めかけたし、途中で「手段が目的化しているのではないか?」=「会社で何をやるのか、ではなく入社すること自体が目的になっていないか?」と悩むこともありましたが、「それが自分にとって大事なことなら、目的化しても構わない」と腹をくくって目的を完遂させました。

最終役員面接で、「これだけの実績があるなら、独立された方がいいのではないですか?」と聞かれた時、「その評価は大変嬉しいですが、御社を知らずして一生を終えたくないのです」と素直に言ってしまいました。それで合格が決まったわけではないでしょうけども、最後に悔いなく言いたいことすべてを話し終えることができた実感がありました。

勝浦雅彦『「伝わらない」は当たり前 つながるための言葉』(光文社新書)
『つながるための言葉 「伝わらない」は当たり前』(光文社)

面接官も人間です。就活・転職、どちらも最後は、人と人の会話ができたかどうかで決まるものだと信じています。

「あなたは最終面接に合格されました。ぜひとも入社していただけますか?」

ある冷え切った冬の夜、最終面接の結果が来ないことにやきもきしながら劇団四季の『ライオンキング』を観ていました。幕間まくあいに廊下に出ると私のケータイに不在着信が残されていました。心臓が高鳴る中かけ直した電話口でこう言われた時が、私の長い長い願いが叶った瞬間でした。遅かれ早かれ、いつかは私もこの会社から去っていきますが、この言葉を忘れることはないでしょう。

みなさんにもそんな瞬間が訪れることを願っています。しーんぱーいないさー!

勝浦 雅彦(かつうら・まさひこ)
コピーライター、法政大学特別講師、宣伝会議講師

千葉県出身。読売広告社、電通九州、電通東日本を経て、現在、電通のコピーライター、クリエーティブディレクター。15年以上にわたり、大学や教育講座の講師を務める。クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト、ADFEST FILM 最高賞、Cannes Lions など国内外の受賞歴多数。著書に『つながるための言葉』(光文社)、『ひと言でまとめる技術』(アスコム)がある。