経営トップが旗振り役に

【山田】反発の声もありました。建設業界は伝統的に男性社会で、女性の割合が少ない業界です。当社も例外ではなく、女性活躍を本気で推進していくということを全社員に浸透させるのにはとても苦労しました。女性を増やすと言っても、全国に多くの支店があるため、支店ごとに見れば女性営業職は1名いるかいないか。現場では男性リーダーから「女性営業職の扱い方がわからない」という声が出たり、女性本人が働きづらさを感じて長続きしなかったりと、なかなかうまくいかない状態が続きました。

【木下】そうした状態からどう脱却していかれたのですか?

【山田】経営トップが「女性の活躍なくして積水ハウスの成長なし」と言い続けてくれたのが大きかったと思います。機会があるごとに全社員に向けて、また社外に向けても発信を続けてくれました。推進メンバーも、多様な感性が求められる住まいづくりにおいては、あらゆる職種で女性をはじめとする多様な人材の活躍が必要だという強い思いを持っていました。それでこそお客様によりよいサービスを提供できるのだと。

【木下】トップ自らが旗振り役を務められていたのですね。それは、現場で女性活躍推進に取り組む方々にとっても大きな原動力になりますね。

【山田】しかし、皆が女性活躍の意義や目的を理解していないと、現場でも「女性を辞めさせてはいけない」といったその場しのぎの対応になってしまいがちです。そのため、上司や職場、そして女性自身にも本質を理解してもらえるよう、新入社員から幹部に至るまで何度もダイバーシティ研修を受けてもらっています。こうした啓発活動は、現在も繰り返し行っています。

【木下】2007年からは全国の女性営業の交流会も始めたと伺いました。

【山田】女性営業職は女性の先輩が身近にいないケースがほとんどでしたので、エリアを超えたネットワークづくりが必要だと感じて、年1回の交流会を始めました。全国の女性営業が一堂に集まり、経営トップによる業績表彰や社長の講話、優秀な成績を挙げた社員による事例発表、グループ討議などを行っています。今では育児や介護中の人、店長職の人など多様なロールモデルが育ってきており、働き方の事例やコロナ禍における営業手法などさまざまなワークショップも実施しています。

【木下】交流会が女性だけという点に反発はなかったのでしょうか。「逆差別だ」という人もいそうですが。

【山田】女性活躍の必要性はかなり浸透していたので、それほど反発はなかったと思います。ポイントは、役員や本部長も参加するなど経営層を巻き込んだ施策になっていること。女性営業育成担当の支店長や営業本部の育成担当者も参加し、女性の活躍や育成度を見える化する機会としています。参加者の満足度も会を追うごとに高まっており、スキルはもちろんモチベーションの向上にもつながっています。

木下明子編集長
撮影=小林久井(近藤スタジオ)