職場に潜むクレーマー気質のクセモノたち

私のところに寄せられる相談の中には、自分の意見ばかりを声高に主張するクレーマーに関するものも少なくありません。

社内クレーマーにメンタル不調寸前まで追い込まれたAさんの例をご紹介しましょう。

Aさんが人事部長を務めるメーカーは、株式譲渡によって他業種の企業に買収されました。グループ会社はすべて同じ人事制度にするという方針だったため、Aさんの会社は裁量労働制から固定時間制へと勤務形態を変更。勤怠システムの改定、社員への周知や説明などでAさんは忙殺されることになりますが、膨大な業務より何より最もAさんを悩ませたのが営業部の一般社員Bさんです。

Bさんは「俺たちの会社の業務は、親会社とはまったく違う。勤怠システムを変えるなんて絶対に間違っているし、うまくいくはずがない。社員は全員不満に思っている。なんでも親会社の言いなりなら、お前ら人事部がいる意味はない!」とまくしたてたそう。メール攻撃や就業時間中の呼び出しなどが重なり、Aさんは心身ともにヘトヘトに。私のところにやってきたときには「彼はインテリヤクザです……」ともらしたほどです。

こうした事例は、実は枚挙にいとまがありません。人事異動や評価、残業時間削減への不満、現状を変えることに異を唱える人は多く、一般社員が上長を攻撃する逆パワハラのような事例も散見されます。

誰もが持つ「アンコンシャスバイアス」に注意

自分の意見をしっかり持ち、きちんと伝えることは重要です。しかし、他人の意見に耳を貸さず、一方的に主張するだけではクレーマーと変わりありませんね。

「自分の意見と違う人を徹底的に攻撃する」という行動の根底には、アンコンシャスバイアスが潜んでいると考えられます。アンコンシャスバイアスとは、無意識の偏見のこと。たとえば、「上司はえらい」というアンコンシャスバイアスが強すぎると、必要以上にへりくだったり、反対意見を言えなくなったりします。また、「お客様は絶対だ」というアンコンシャスバイアスがかかっていれば、お店のスタッフに対して高圧的な態度をとることになんの抵抗も感じなくなってしまいます。

アンコンシャスバイアスは、誰もが無意識のうちに持っているものです。しかし、その程度は人それぞれ。多様性を認められない非常に偏った考えを持つ人もいれば、自分のなかにも偏見の芽があることに気づいていてバランスをとれる人もいます。