偏った思い込みがストレスを増幅させる
幸福感が低い人は、なぜクレーマー化しやすいのか。それは、困難を乗り越える力=レジリエンスが低下してしまうからです。
例えば、あなたが企画提案したプロジェクトなのに、別の同僚がリーダーを任されることになったとしましょう。マーケティング調査や資料制作など、誰よりも精魂傾けて準備してきたあなたは、もちろん悔しさも感じるはずです。それでも、多くの人は「プロジェクト成功のために与えられた役割で頑張ろう」と気持ちを切り替えたり、「自分はまだリーダーとなるには力不足ということかもしれない、もっと実力をつけよう」と奮起したりと、この決定だけで自暴自棄になることはないでしょう。
「企画を横取りされた」「私を陥れた」とモンスター気質発動
ところが、もしあなたの根底に「自分は不幸だ」という思いが巣食っていたとすると、捉え方はまったく異なってしまいます。「私は不幸な人間だから、同僚に手柄を取られることになってしまった」「あの同僚が根回しをして、自分を陥れたに違いない」「チームのみんなも私のことをバカにして笑っている」。こうした思考のループにハマってしまうと、抜け出すのは容易ではありません。同僚に「あなた、どんな手を使って取り入ったの?」と言いがかりをつけたり、「どうせ私が企画を立てても横取りされるだけですから!」と投げやりな態度をとるようになったりと、“厄介なクレーマー気質”へと一直線。自ら孤立していってしまうのです。
不幸だと感じている人は、自ら不幸を招いてしまう。これを心理学では、シナリオ効果と言います。自分の人生に対してどんなシナリオを描いているかによって、現実の生活までもが左右されていく。自分は不幸だというシナリオを描いていれば、そのまま不幸へと突き進んでいく。「今は困難に見舞われているが、私ならきっと解決できる。友人や家族も私を信じてくれている」、こんなふうに捉えられれば、逆境を力に変えて乗り越えていくことだってできるはずなのに、思い込みの力とは恐ろしいものです。