リンはいろいろな食品に入っているのにもかかわらず、「味がない」「においもない」「見えない」という“ないないづくし”。このため、ほとんどの人が日々知らず知らず口に入れてしまい、知らず知らずのうちに大量のリンを摂りすぎてしまうことになっていくわけです。これだけでも糖分や塩分を制限する場合とはだいぶ勝手が違うということがお分かりいただけるでしょう。

すなわち、リンを食事制限のターゲットにするとなると、味もにおいもしないし、姿すらろくに見えない「透明な相手」を敵に回して戦っていかなくてはならないことになるのです。

たんぱく質食品に多い有機リン、加工食品に多い無機リン

では、こういう「見えない敵」とどう戦っていけばいいのか。それには、リンというターゲットがどんな特徴を持った物質で、どういった食品にとくに多いのかを知っておく必要があります。

まず、押さえておいていただきたいのが、リンには「有機リン」と「無機リン」の2種類があるということです。

有機リン――肉類、魚介類、卵、乳製品、野菜、穀物などに広く含まれているリン。食品中の有機リン含有量はたんぱく質含有量に比例することが多く、このため、肉、魚、牛乳やチーズなどのたんぱく質食品に多い傾向がある。ただし、体内への吸収率は20~60%と食品によってかなり違いがある。
無機リン――食品添加物として使用されているリン。ソーセージやハム、ベーコンなどの加工肉、干物や練り物、スナック菓子、インスタント麺、ファストフードなど、ほとんどの加工食品に含まれている。体内への吸収率は90%以上で、口から入った添加物の無機リンはすべて吸収されてしまうと思ったほうがいい。

「食べてもいいリン」は大豆食品

じつは、有機リンには「吸収されやすいタイプのリン」と「吸収されないタイプのリン」とがあります。一般に、肉や乳製品などの動物由来の有機リンは吸収されやすく、野菜などに含まれる植物由来の有機リンは吸収されにくい傾向があるのです。なかでも、とくに覚えておいていただきたいのは、「リンが多いとされている食べ物」であっても、人の体にはまったく吸収されないタイプの食品があるという点です。

その「吸収されないリン食品」が「大豆」です。

大豆の有機リンは「フィチン酸」というかたちで含まれていて、このフィチン酸は人間の腸からは吸収されません。たくさん摂ったとしても、吸収されないまま便と一緒に排泄されていくことになります。つまり、「吸収されないタイプのリン」なら、別に食べても構わないということ。大豆は「リンが多い食べ物」とされているのですが、これは「食べてもいいリン」だということになります。