男性たちが大量離職

【白河】「脱下請け宣言」はかなり思い切った行動ですね。せっかくの安定収益を手放すのかと、社内で反発はありませんでしたか? 経営は大丈夫だったのでしょうか?

現在のNOKIOOは女性が7割を占める。
現在のNOKIOOは女性が7割を占める。(写真提供=NOKIOO)

【小川】ありました。当時は社員の8割が男性だったのですが、彼らがごそっと辞めていき、人材は減るし収益は落ちるしで、正直この頃がいちばん苦しかったですね。ただ、結果的に意欲の高い女性社員が残ってくれたのと、さらに「育勉セミナー」などの地域の女性活躍推進に係わる活動に共感した女性の入社が増え始めていたので、そうした人たちが大きな戦力になってくれました。以前は、数少ない女性社員も「長時間労働についていけない」と次々に離職し、新たに採用した女性にもなかなか定着してもらえなかったんです。それが育勉セミナーや脱下請け宣言を経て大きく変わり、2015年ごろには完全に男女半々になりました。今では社員の約7割が女性です。

求人広告を出さなくても女性人材がやってきた

【白河】地方の中小企業にとっては人材募集の広告費用もかなり負担ですよね。高いお金を払って求人広告を出さなくても、女性人材が向こうから来てくれるようになったと。育勉セミナーも最初は利益を追求したものではなかった。でも種まきになったんですね。セミナーを通じてノキオを知ってもらえた。プレーヤーが入れ替わるとルールも変わる。会社全体の働き方も自然と変わっていきそうですね。

【小川】変わりました。地域の優秀な女性がたくさん入ってくれると、経営者もそれに対応して、会社全体がいい方向へ変わっていくんだと実感しましたね。当社では2017年ごろにオンライン上にワークスペースをつくり、いつどこにいても仕事を進められる体制を整えました。テキストベースのコミュニケーションやオンライン会議では意図がうまく伝わらない場合もありましたが、そこは「じゃあ会社に来てよ」ではなく「オンラインでも伝わるようにしようよ」と。皆でコミュニケーションスキルやロジカルシンキングの研修を受けたり、各自の仕事をきちんと定義したり、縦横斜めの関係づくりに力を入れたりと、さまざまな手を打って乗り越えてきました。