7年前のツイッターきっかけに生まれた「すまん」

こうした風土は、イノベーションの創出にもつながっているようだ。近年、井村屋グループでは、具が入っていない皮だけの中華まん「すまん」や、非常食にもなるようかん「えいようかん」など、ユニークな商品が続々と誕生して人気を集めている。

「井村屋ウェブショップ」限定発売の「すまん」
井村屋ウェブショップ」限定発売の「すまん」(写真=井村屋グループ提供)

例えば「すまん」は、2020年に井村屋ウェブショップで限定発売された商品。発売に至るまでには紆余うよ曲折があったそうだが、いざ売り出してみるとSNSを中心に爆発的な人気を集め、わずか3カ月で完売となった。

実は、社内で「すまん」の開発話が持ち上がったのは7年前。きっかけは、若手社員がSNSで目にした消費者のツイートだった。商品営業企画部の花澤麿弓子さんは、「お客様の『中身のない中華まんが食べたい』というツイートを見て、それならつくろうとチームで動き出しました」と語る。

だが、当時は販売経路や営業面でのハードルが高く、経営層の承認を得るまでには至らなかったという。その後、井村屋ウェブショップが成長し、新商品をネット限定で売り出すことが可能な状況になったところで、花澤さんの上司である浅田英伸さんが経営層に再アタック。ウェブショップでの限定販売を提案したところ、今度はすんなりOKが出た。

「7年前はダメでしたが、企画自体は面白いと思ってずっと暖め続けていたんです。その後発売できる環境が整い、世の流れから言っても『今ならお客様も面白がって受け入れてくれるだろう、SNSで話題になるだろう』と思ったんです。宣伝効果や利益なども併せて説明したところ、SNSに疎い役員も賛成してくれました」(浅田さん)