15回の異動を経て。今もニトリで働く理由
そして今、千野さんはニトリファシリティという子会社へ出向し、事業本部長を務めている。ニトリグループの保険代理店業務から、産業廃棄物や清掃の管理まで多岐にわたり、いわばグループ全体を裏方で支える事業を行っている。部下が担う仕事はそれぞれ専門性が高く、チーム全体の一体感はどうしても希薄になりがちだ。千野さんはここでも過去の経験を活かせたらと意気込んでいる。
「おかげで社内のネットワークもできたので、ニトリファシリティの存在をもっと認知してもらえるよう取り組んでいます。産廃管理や保険業務は会社にとっても重要な仕事。ニトリグループの安心安全の一翼を担っていることに、従業員やパートの人たちにも誇りをもって働いてもらえるよう働きかけていきたいと思っています」
ニトリで働き続けて20年が過ぎる。これまで異動したのは15回ほど、店舗、人事、品質改革、商品部、人材教育、CSRや環境の取り組み、社長室などさまざまな業務を経験してきた。同期や後輩が店長、エリアマネジャーとキャリアを積んでいく横で、一担当として仕事をすることに悩んだこともあったが、今では他の誰よりも幅広く経験をつめたことこそが強みになっているという。
「私は器用貧乏というか、決してスぺシャリストではないんですよね。とびぬけて何か強みがあるわけでもないですし。昔店長が言ってくれた『自分がやるべきことをちゃんとやっていけばいい』を思い返しては、自分にやれることがあれば何でもやろうと思ってきただけで……」とほほえむ千野さん。
ずっと忘れられないのは、初めてニトリの店舗を見学したときに胸がワクワクと躍ったこと。その気持ちをお客さまに伝えたいという思いが、自分の原点になっている。
1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。