これからの夢は“今まで”にあった

実は産育休に入る頃、社内のビジネスプランコンテストに向けて同僚と三人で新しいビジネスを考えていた。それは女性特有の健康課題に取り組むビジネスだった。例えば働く女性を取り巻く様々な健康課題を知ってもらうための啓蒙活動や、貧血に対処する商品のサービスを提供するなど、働く女性をサポートするプラットフォームづくりを提案したのだ。

べジチェック:手のひらをセンサーにかざすだけで野菜接種の充足度を測定できる
べジチェック:手のひらをセンサーにかざすだけで野菜摂取の充足度を測定できる(写真提供=カゴメ)

久森さんは育休後に健康事業部へ異動し、温めてきたプランを推進していく。さらにこの年2020年から全社で「野菜をとろうキャンペーン」がスタート。日本の野菜不足の解消を目指し、カゴメでは個人の野菜摂取量を測定できる機器「ベジチェックⓇ」の体験会を実施。そのマーケティングに携わった久森さんは、今年4月から広告部で「野菜をとろうキャンペーン」を担当することになった。

実際に消費者に「野菜をとろう」と発信しても、自分や家族の生活がどう変わるのかを理解してもらわなければ行動につながらない。久森さんにとっては、これまでの仕事や子育ての経験が活かされているようだ。

自宅にて
自宅にて(写真提供=カゴメ)

「仕事では常に野菜のことを考えていますし、家族のために食事をつくる気持ちも大事にしています。それが健康を保ち、子どもの成長につながっていくので、自分がやっている仕事の意義もより感じるようになりましたね」

家庭では子どもたちと野菜の収穫体験に行ったり、トマトの苗を庭で育てたり、一緒に楽しむなかで自然に野菜を食べてもらえるようになった。自分自身もかつては過労でよく倒れていたが、今では早寝早起きとピラティス、そしてバランスの良い食生活を心がけることで「身体も強くなりました!」と久森さん。この仕事を通して、働く女性たちの健康をさらにサポートしたいと夢もふくらんでいる。

歌代 幸子(うたしろ・ゆきこ)
ノンフィクションライター

1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。