奈落の底に落ちたくない

晩婚化や少子化がニュースで頻繁に嘆かれていました。「官製婚活」なども話題になっていました。他の政治のニュースは耳に入らないのに、結婚については自分の世代に関係があるので、グイグイ耳に入ってきました。国が婚活にお墨付きを与えている事実は、結婚相手を探すことへの抵抗感を和らげてくれました。結婚することも子供を産むことも、国への貢献であって、恥ずかしいことではないのだと。

笛美『ぜんぶ運命だったんかい おじさん社会と女子の一生』(亜紀書房)
笛美『ぜんぶ運命だったんかい おじさん社会と女子の一生』(亜紀書房)

そもそも私たちは子供の頃から、膨大な予算をかけた結婚マーケティングに、何年も晒されてきているようなものです。ラブソング、少女漫画、ディズニープリンセス、テレビドラマや映画も、結婚は幸せだとプロモーションしていました。広告でも結婚と出産は幸せな人生のシンボルのように描かれていますし、私も広告でそんな物語を描いてきました。そんな王道の人生を私も歩きたいし、お墨付きを与えられた幸せをかなえたかったのです。

もしそうできなかったら? 私は惨めな女という崖の下に落とされるのでしょう。広告にもドラマにも出てこない日の当たらない独身中年女の世界。輝く男女の表舞台からこぼれ落ちた奈落の底は光の届かない地獄。絶対にそこへは落ちたくないと思っていました。

結婚のための最大限の努力

私は小さい頃から努力だけは得意でした。受験・部活・就活も努力をすれば、目標以上の結果を出して両親や先生の期待に応えてきました。そんな私なら結婚や出産も当然のようにできるはず。

結婚のためにできる最大限の努力をしよう。寄り道なんてしたくない。最短距離で結婚できる関係を作ろう。でも誰かに紹介を頼むのは、自力で結婚相手を見つけられないみたいで、恥ずかしい。友達にも「笛美ちゃんに釣り合う男を紹介できない」とよく言われてる。それは自分の女としての価値が低い割に、男としての価値が高すぎるからだろう。だったらいっそプロに頼んだ方が速いのではないだろうか?

28歳の私は30万円を払って結婚相談所に入会しました。

笛美(ふえみ)

2020年5月8日にTwitterに投稿した「#検察庁法改正案に抗議します」を作った張本人。ハッシュタグは瞬く間に広がって、400万を超すツイートを生み出し、Twitterトレンド大賞2020の2位に。現在も広告関連の仕事をしている。