豪雨災害をきっかけに口コミで広がる

そんなバンブークリアが広がったきっかけは、2018年夏に広島を襲った豪雨だった。

「広島の豪雨の時、市内の下水管がいくつも破裂したんですね。その時、業者と一緒に中を見た主婦の方が、管の内部にこびりついているどろどろの柔軟剤の成分を見てびっくりしたそうなんです」。そこで、高い洗浄力を持ちながらも化学物質を使用していない洗剤はないものかと探すうちに、湧き水と竹炭だけからできているバンブークリアにたどり着き、口コミで注文が広がった。

エシカルバンブーが製造・販売する竹の洗剤「バンブークリア」
エシカルバンブーが製造・販売する竹の洗剤「バンブークリア」(写真=エシカルバンブー提供)

さらに2019年の千葉県の豪雨では、停電が長引き、洗濯機が使えず困った人の間でバンブークリアが評判になった。「夏なので大人も子どもも汗をかいて、汚れやにおいで困っていたそうです。バンブークリアは泡が出ないので、たらいに入れてつけおき洗いをし、すすがずそのまま干しても大丈夫だということで人気が出ました。これは災害時の特殊な例なので、すすぎができる環境では、汚れをしっかり落とすためにも1回すすぎをしてほしいのですが」

豪雨災害の被災地を中心に口コミで広がり、2019年の売り上げは1000万円に。翌2020年10月にはテレビの情報番組で取り上げられて、1年半分にあたる1万本の注文が1日に集中した。2020年は、4500万円にまで売り上げが増え、最近では月600万円と、前年の1.5倍以上に伸びている。

「汚れがよく落ちるし、背景にあるストーリーがおもしろい」と、都内の高級スーパーなどからの引き合いが増えているほか、パリコレに商品を提供しているような有名ブランドなどからのコラボレーションの相談も相次いでいる。

おじいちゃんたちに喜んでほしい

メディアで取り上げられることも増えた。忙しい田澤さんだが、できるだけ取材を受けるようにしているという。

「おじいちゃんたちには、自分たちが作った商品がどんな風に市場に受け入れられているかが伝わりにくいんです。メディアに出ると、それがわかるので、雑誌やテレビに出ると、すごく喜んでくれるんですよね」

ただ、高齢者と働いていると、ふいに別れが訪れることもある。「今年3月には、創業時から応援してくれていたおじいちゃんが亡くなったんです。いつどこで何が起こるかわからない。『時間がないな』と思いました。高齢者と仕事をすることの、悲しいところでもあります。だからこそ、彼らに喜んでもらえるような成果を残していきたいんです」